十種神宝 中学国語の基礎・基本

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7時間目以降「別の人物の視点で書こう」

「別の人物」とは、この物語の場合エーミールと母親の二人です。
この時のポイントは、テキストに書かれている事実を絶対に見落とさない、ということです。

彼らは主人公ではありませんから、その心理についてはまったく述べられてはいません。
そのため、自分の想像で物語を膨らめる余地があります。

しかし、自分の想像部分を膨らませるあまり、テキストに書かれてある事実を無視してしまっては、まったく異なる物語を創作してしまったことになります。
そうなると、単に登場人物の名前だけ同じで、テキストとは関係ない話となりますので、今までの読解の授業が生かされません。

今までの細かな読解から、その登場人物が、当然そう思い、感じているだろうことを忠実に書き起こすことが「別の人物の視点で」という意味だと思います。
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エーミールの視点から物語を再構成する

エーミールの視点から物語を再構成する場合、落としてはいけない点は以下のものがあります。

  1. コムラサキを見せられたとき、エーミールはどう思ったか。
  2. 「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」は、どんな気持ちで言ったのか。
  3. 「結構だよ~」の台詞を聞いて顔色が変わった「僕」を見て、どう思ったか
  4. その後どうなったか
小学校4~5年生くらいのエーミールは「僕」にコムラサキを見せます。

「僕」は彼を「気味悪い性質」と言い「妬み、嘆賞しながら彼を憎んで」いました。

では、エーミールは「僕」をどういう人物と考えていたのでしょう

もしエーミールが「僕」の考える通りの嫌なやつなら、鑑定し値踏みをした後で難癖をつけたのは嫉妬からだったかも知れません。
あるいは「僕」の気持ちを考えずに自分の知識をひけらかしたかった、とも考えられます。

では、なぜ「僕」はエーミールにコムラサキを見せたのでしょう。
もしも「僕」がエーミールに親近感を覚えていたとするならば、
そしてエーミールもまた「僕」を友人だと感じていたのなら、話は違ってきます。

鑑定し値踏みした後の彼の話は、40円程度にしかならない理由の説明であり、
「今度はこういう所に気をつけたらいいよ」という不器用なアドバイスだったとも考えられます。

『ドラえもん』ののび太君は出来杉君に一方的に敵愾心を向けていますが、出来杉君はのび太君を友人と考えています。
またしずかちゃんをめぐっては「のび太くんにはかなわない」的な発言をしています。

「僕」とエーミールの関係は、のび太君と出来杉君の関係に似ていた、という解釈も可能なのです。

クジャクヤママユのエピソードでエーミールは、「僕」の犯罪を罰する気も、賠償を求める気もありません。
ひたすら「僕」のアイデンティティーを否定しただけです。

これを「僕」は「軽蔑」ととらえましたが、失望やそこからくる静かな怒りと考えることもできるかも知れません。

勝手な空想をせず、あくまでテキストに書かれた内容に対して、自分なりの解釈を加え書いていくことがポイントなのです。

生徒は知る必要のないことですが、ヘッセが父母の望みに従って神学校でまっとうな生活をした「もしも」の姿がエーミールだったとすると、自分自身を非難する「もう一人の自分」だったのでしょう。「もう一人の自分」なのですから、内心親和感を覚えていてもおかしくはありません。

そして「僕」はエーミールの側の人間に成長し「客」としてここにいるわけです。
もしエーミールが、未来の自分である「客」の姿を見たとしたら、エーミールは何と言うのでしょう。

母親の視点から物語を再構成する

エーミールに比べて、母親の登場場面はとても少ないものです。

母親の最初の台詞では、「僕」の賠償責任について言及していますが、罰する気はないようです。
これは、少年裁判の結果、教育的措置としての不処分に該当するものと考えられます。
  • お前の罪は罰しないよ。既に十分に反省し罰を受けているから。でも賠償責任は果たさなくてはね
というのが母親の考えでしょう。

母親の視点から書く場合は、

まず、この「僕」から告白され「おまえは、エーミールのところへ行かなければなりません」と言ったときの気持ちを説明します。

次に、まだ中庭にいる「僕」を見て「今日のうちでなければなりません」と言った時の気持ちです。
当然息子の姿を目にしているのですが、なぜ謝罪に行くことをためらっているか、母親はどの程度わかっていたのでしょうか。
これは、「僕」以上にエーミールが母親(大人たち)にどういう子供と考えられていたかによります。

次に「僕」が帰ってくるまで待つ気持ちです。
息子はエーミールに許してもらえたのか、自分のしたことをきちんと伝えられたのか、当然心配しながら待っていたことでしょう。

そして「僕」が帰ってきてから何も聞かずかまわずにおいた気持ちです。
「僕」の帰ってきた時の表情を見て、謝罪は受け入れられなかったことはわかったはずです。

最後に「僕」が食堂へ行ったのを見た気持ちを書きます。
息子は、なぜ寝室でなく食堂へ行ったのか、食堂で何をしようとしているか予測できたのか、予測したとしたらそれをどう思ったのか。
様々な解釈が成り立ちます。

この「母親」視点の物語は、書いた生徒の母親に対する願望が込められる可能性が高いですから、興味のあるところです。



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第5時間目 「僕」のちょうに対する気持ちを知る

この時間のねらいは「気持ちを表す叙述」を的確につかむことです。

この時の「僕」の気持ちは「あの熱情」に集約されます。
その内容は
  • 子供だけが感じ取ることのできる、あのなんともいえない、むさぼるような、うっとしした感じ
  • 捕らえる喜び
  • 緊張と歓喜
  • 微妙な喜びと、激しい欲望との入り混じった気持ち
と説明されています。そしてその行動は「まるで宝を探す人のよう」と比喩により説明しています。

「ひどく心を打ち込んでしまい~やめさせなければなるまい、と考えたほどだった。」は「心を打ち込む」以外は外部評価で、学校をサボったり食事に帰らなかったりするのは他者が「やめさせなければ」と考える根拠です。

「あの時味わった気持ち」の「あの時」とは「幼い日の無数の瞬間」です。
キアゲハや「焼け付くような昼下がり」「涼しい朝」「森の外れの夕方」が具体例です。

非常に詩的な表現が多いですが、「気持ち」を考える上で、確実に「気持ち」を述べた部分と、その気持ちを説明した部分をきちんと読み分けることは、文学的文章の記述問題にもつながるものがあると思います。

生徒はどんどん出してくると思います。これらを構造的に板書にまとめていきます。

最後に「では、次の時間は、こんなにして集めた自分のコレクションを壊してしまう原因になったエーミール君について考えてみよう」と告げ、授業を終わります。

第6時間目 エーミールの人物像を考える

「僕」視点の物語ですから、エーミールについてはあまり好意的に描かれていません。
これを「僕」と、もう一人の「僕」であるエーミールを対比的にとらえることにより、エーミールの人物像を正確に考えさせることがねらいです。

そこでまず「エーミールはどんな人物だと思う?」と素直な感想を述べさせます。
まあ、たいてい「嫌な奴」というような答えが返ってくると思います。

そこで「ではエーミールはどんな奴か、具体的にまとめてみよう。」と言って、教科書の叙述をあげさせます。

エーミールは「先生の息子」です。
「非の打ちどころがない」「模範少年」で、「僕」はこれを「悪徳」「子供としては二倍も気味悪い性質」と言い、「妬み、嘆賞しながら彼を憎んで」います。

「僕」が「立派な道具」をもっていないのと同様、エーミールのコレクションも「小さくて貧弱」ですが、「こぎれいなのと、手入れが正確な点」で「僕」も評価しています。

更に彼は破損した蝶の羽を修復する技術を持っています。
また蝶の標本の目利きもできるようです。

「僕」のコムラサキに20ペニヒ(約40円)という値をつけ、「展翅のしかたが悪い……」等の解説をしています。
「僕」は「足が二本欠けている」ことすら「たいしたものとは考え」ず、彼の指摘を「難癖」と言い「こっぴどい批評家」と言っています。
「僕」はエーミールがコムラサキの値踏みした後「しかし、それから、彼は難癖をつけ始め」たとしていますが、「難癖」の内容は、たった40円の価値しかないという判断の理由だったとも考えられます。

これらを生徒から自由に出させながら、「実像」と「僕の評価」とに分けて構造的に板書していきます。そして後半部が本時の山場です。

板書を眺め、「エーミールは実際どんな奴だったと思う?」と問います。
当然授業の最初に考えたものとは違ってくると思います。

「みんなの知っている誰に似ている?」とより具体的に考えさせると『ドラえもん』の出来杉君、という答えが返ってきます。
(出てこなければこちらから提示すると「あ~」という反応が返ってきます。)
que-11189680846出来杉君

「『僕』はコムラサキを標本にしたとき得意がってエーミールに見せびらかそうとしたけど、エーミールは単純に『すごい』とは言わなかったのはなぜだろう。」と問います。
すると「あまり良い標本ではなかったから」と応えます。

「じゃぁ、『僕』は何が嬉しかったのかな?『自分の獲物に対する喜び』って、何だろう。エーミールとどこが違うんだろう。」と問いかけます。
すると生徒は「僕」は蝶を手に入れる行為そのものに価値を求めているのに対し、エーミールは結果を求めていることに気づきます。

「僕」がコムラサキをエーミールに見せたのは、家の近所だったからではなく、「僕」とは経済的にほぼ等しく、「僕」の気持ちを共有できる人物として選んだのです。
しかし二人の求めるものは違っていて、「僕」は純粋に行為を愉しむことを、エーミールは結果の良さを求めていることに気づかせます。

最後に
「蝶を手に入れる、という行為は、野生の蝶を捕まえることだけじゃなくても言えるよね。
次の時間は、いよいよエーミールの蝶をゲットしてしまう場面だ。
これが最後の場面で自分のコレクションを壊してしまうことにつながってくるんだね。」
と言って授業を終わります。


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第5時間目
 
盗みを犯した「僕」の心理変化をつかむ

この時間のねらいは、登場人物を取り巻く「状況」と登場人物の「心理」の相関の中で登場人物は「行動」している、ということを押さえることです。

文学的文章は、この三つの要因の中で「心理」を省くことにより、より読者を物語の内容に迫らせる(感情移入させる)という特徴があります。

そして「心理」は、テスト等で最も問われる内容でもあります。
ですから「心理」の変化は、それをもたらした要因である「状況」やその結果である「行動」を読み解くことによって理解できるということを教えるための時間です。

「二年後」とありますから、物語の「僕」は生徒たちとほぼ同じ中学一年生くらいの年齢です。
小学校で常軌を逸するレベルで熱中していたことをまだ続けていたのですから、ほとんど病的な状態でしょう。

  • 僕は「熱烈にほしがっていた」クジャクヤママユの話を聞いて、一目見るために隣家に侵入、特に見たいと渇望した「あの有名な斑点」に魅せられて窃盗行為をし、犯行を隠すためにとっさにとった行動が結局獲物を台無しにしてしまった。
という流れを「状況」とそれに伴う「心理」の変化、変化によってもたらされた「行動」をワークシートにまとめさせると良いでしょう。

これらを示している叙述を的確に抜き出しワークシート等に書かせます。
そして「心理」の部分に叙述がなかった場合は、生徒に言葉を考え補わせます。

ここで展翅板と展翅のしかたがよくわからないと、盗みをする前後の状況がよくつかめませんから、きちんと解説しておきましょう。
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展翅されているので羽の斑点は見えない

これを全体で発表し共有するので一時間かかります。

最後に「盗みをしたという気持ちより、自分がつぶしてしまった、美しい、珍しいちょうを見ているほうが、僕の心を苦しめた」という叙述から、「僕」がつらく思ったのは蝶の美を壊してしまったことであることを押さえます。

第6時間目 なぜちょうを指で粉々に押しつぶしてしまったのか考える

いよいよ単元の学習問題の解決編です。

「僕」は母親とエーミールに自分の犯行を告白しています。

では、その内容とはどのような内容だったのでしょう。これを生徒たちはあいまいに考えているようです。
その内容とは、母親の
  • 「自分でそう言わなくてはいけません」
の「そう言」った内容です。

これをおさえてから、「僕」は母親にどんな内容を打ち明けたのか、生徒に考えさせます。
年齢がほぼ等しいので結構リアルに発表できると思います。
  1. クジャクヤママユを見たくてエーミールの所へ行った。
  2. エーミールはいなかったが部屋に入った。
  3. 蝶を探したら展翅板にあった。
  4. 羽を見たらどうしても欲しくなってつい盗んでしまった。
  5. 下から誰か来る音がしたので、あわててポケットに入れた。
  6. これはいけないと思って返しに行ったが、クジャクヤママユは壊れていた。
こんな内容に違いありません。

これを聞いて母親は、次の内容を指示します。
  • 自分でそう言わなくてはいけません=上の1~6の内容をエーミールに直接言いなさい。
  • どれかをうめ合わせにより抜いてもらうように申し出るのです=自分の持ち物を損害賠償として自分のコレクションを差し出しなさい。
  • 許してもらうように頼まなければなりません=1及び2によって、許しを請いなさい。

これに対し「僕」は、何を「わかってくれないし、おそらく全然信じようともしないだろう」と考たのでしょう。

おそらく4「羽を見たらどうしても欲しくなって盗んでしまった」ことでしょう。これを疑った場合、「最初から盗むつもりで来たんじゃないか」と思われてもしかたがありません。

また5と6だった場合、「最初から嫉妬のために蝶を壊すつもりで来たんじゃないか」と思われることでしょう。

「僕」は、純粋にクジャクヤママユの美しさ故に自分のものにしたくなった……見るまでは欲しいとは思わなかった、という気持ちなど、エーミールには理解できないと考えたのです。
美に打たれて初めてそれを自分のものにしたいと願うアーティスト的な魂と、結果としての価値こそ大切なものであるというリアリスト的な魂とは、わかり合うことができないと「僕」にはわかっていたのです。

しかしついにエーミールの所に出かけます。
その時エーミールは、標本を壊したのは「悪いやつがやったのか、あるいは猫がやったのかわからない」と言っています。
そして「僕」はエーミールが必死に修復しようとした状況を目の当たりにします。

「僕」はそこで母親に話したのと同じように告白しますが、「君はそんなやつなんだな」と言われます。

「そんなやつ」とは、平気で盗みをするやつ、という意味でしょう。
盗みは犯罪です。しかし自分の欲求を満たすためなら簡単に犯罪を犯す人間、という意味でしょう。ししかし「僕」のしたことは、まさにこの通りなのです。

あるいは嫉妬のために他人の貴重品を平気で壊すやつ、という意味だったのかも知れません。
もし本当に蝶が欲しくて盗みをするのなら、蝶の扱いは自然に慎重になりますが、最初から壊すつもりなら躊躇しないでしょう。
もし盗むのが目的だったとしても、盗品の扱いが雑だということは、盗む(手に入れる)という行為自身に快楽を覚えていたことになります。
美の求道者とは、犯罪者の側面をもっているのかもしれませんね。

しかしこう思われることは「僕」には想定内でした。ですからまだキレていません。
「僕」は「そんなやつ」と言われる覚悟をしていたのです。

逆ギレしたのは、母の指示2に従い「僕のおもちゃをみんなやる」「自分のちょうの収集を全部やる」と賠償案を提示した時です。
  • 君の集めたやつはもう知っている=君のコレクションに価値はない
  • 君がちょうをどんなに取り扱っているのか、ということを見ることができた=コレクターとして失格である
この言葉は、自分が熱情を傾けてきたアイデンティティーを全否定するものです。このため「僕」は完全に逆ギレしそうになります。

しかし「僕」は、この二つの指摘に反駁することはできませんでした。「僕」は「一度起きたことは、もう償いのできないものだ」と悟って、エーミールのもとを立ち去ります。

「一度起きたこと」とは事実であり結果です。
蝶を手に入れるという行動に喜びを求めてきた「僕」ですが、行動には必ず結果が伴います。
その結果が誰かに不利益を及ぼした場合、それを賠償することは不可能である、と悟ったのです。
  • 誰も罰してくれないから、自分に罰を与えるため
  • 行動に喜びを求めた今までの自分を黒歴史としてなかったことにしようとした
等、「僕」が蝶のコレクションを壊した理由は、はっきりわかりません。
授業で扱った場合、拡散型の結論になるでしょう。

しかしこの追究の中で、生徒一人一人が最初に持った考えから、他の人の考えに触れて深化・変容する姿が「学び」の姿だと思います。

「一つ一つ取り出し、指で粉々に押しつぶし」た時の気持ちや、なぜ「押しつぶした」のではなく「押しつぶしてしまった」と言ったのか、細かな叙述にこだわって欲しいと思います。

ただ、「償うことはできない」と言っているので「罪の償いのために自分のコレクションを壊した」という解釈は誤りではないかと思います。
法律的にも「罰」は刑法上の制裁であり「償い」は民法上の賠償となりますから、一度犯した犯罪行為はいくら禁固刑や罰金刑が課せられたとしても罪を償ったことになるとは言えません

例えばコンビニで万引きしたチョコレートを食べてしまった場合、窃盗罪で逮捕され罰金10万円を払ったとしても、罰金は国庫に納められます。罰金とは別にコンビニにチョコレート代金と慰謝料を支払わなくては罪を償ったことにはならないのです。

最近も迷惑系ユーチューバーでも似たような事件がありましたね。彼は、お金を後払いすれば窃盗罪には問われず、しかも賠償責任はないと思っていたようです。生徒にはそんな人間にだけは絶対なってほしくありません。

「僕」は自分で自分を罰することはできても、罪を償うことは一生できないわけですから、人生をかけてちょう集めをやめることくらいしか自分の誠意を示せないのです。
まあ、母親が指示した賠償責任を果たすことができなかったので、せめて刑事罰を与えようとしたとも考えられます。
「僕」は中学1年程度ですから、ここまで考えたかどうかは怪しいですけどね。

しかし「罪」に対する「罰」と「賠償」の違いくらいは、生徒にきちんと教えたい内容だと思います。


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第3時間目 「僕」のちょうに対する気持ちを知る

この時間のねらいは「気持ちを表す叙述」を的確につかむことです。

この時の「僕」の気持ちは「あの熱情」に集約されます。
その内容は
  • 子供だけが感じ取ることのできる、あのなんともいえない、むさぼるような、うっとしした感じ
  • 捕らえる喜び
  • 緊張と歓喜
  • 微妙な喜びと、激しい欲望との入り混じった気持ち
と説明されています。
そしてその行動は「まるで宝を探す人のよう」と比喩により説明しています。

  • ひどく心を打ち込んでしまい~やめさせなければなるまい、と考えたほどだった。
は「心を打ち込む」以外は外部評価で、学校をサボったり食事に帰らなかったりするのは他者が「やめさせなければ」と考える根拠です。

  • あの時味わった気持ち
の「あの時」とは「幼い日の無数の瞬間」です。
キアゲハや「焼け付くような昼下がり」「涼しい朝」「森の外れの夕方」が具体例です。

非常に詩的な表現が多いですが、「気持ち」を考える上で、確実に「気持ち」を述べた部分と、その気持ちを説明した部分をきちんと読み分けることは、文学的文章の記述問題にもつながるものがあると思います。

生徒はどんどん出してくると思います。これらを構造的に板書にまとめていきます。

最後に
  • では、次の時間は、こんなにして集めた自分のコレクションを壊してしまう原因になったエーミール君について考えてみよう
と告げ、授業を終わります。

第4時間目 エーミールの人物像を考える

「僕」視点の物語ですから、エーミールについてはあまり好意的に描かれていません。
これを「僕」と、もう一人の「僕」であるエーミールを対比的にとらえることにより、エーミールの役割について考えさせることがねらいです。

そこでまず「エーミールはどんな人物だと思う?」と素直な感想を述べさせます。
まあ、たいてい「嫌な奴」というような答えが返ってくると思います。

そこで「ではエーミールはどんな奴か、具体的にまとめてみよう。」と言って、教科書の叙述をあげさせます。

エーミールは「先生の息子」で、「非の打ちどころがない」「模範少年」です。

「僕」はこの性格を「悪徳」で「子供としては二倍も気味悪い性質」と言い、「妬み、嘆賞しながら彼を憎んで」います。

「僕」が「立派な道具」をもっていないのと同様、エーミールのコレクションも「小さくて貧弱」ですが、「こぎれいなのと、手入れが正確な点」で「僕」も評価しています。
更に破損した蝶の羽を修復する技術を持っています。

蝶の標本の目利きもできるようです。
「僕」のコムラサキに20ペニヒ(約40円)という値をつけ、「展翅のしかたが悪い……」等の解説をしています。
「僕」は「足が二本欠けている」ことすら「たいしたものとは考え」ず、彼の指摘を「難癖」と言い「こっぴどい批評家」と言っています。

彼は値踏みして「しかし、それから、彼は難癖をつけ始め」たとしていますが、これはたった40円の価値しかないという理由の説明だったとも考えられます。
ちなみに現在、ネットオークションではコムラサキの標本は400~500円で取引されています。ですから「僕」の持ち込んだ標本は、足が二本欠けている等の欠陥がありますから、現在なら40円でも取引されるか怪しいところです。

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これらを生徒から自由に出させながら、「実像」と「僕の評価」とに分けて構造的に板書していきます。そして後半部が本時の山場です。

板書を眺め、「エーミールは実際どんな奴だったと思う?」と問います。
当然授業の最初に考えたものとは違ってくると思います。
「みんなの知っている誰に似ている?」とより具体的に考えさせると『ドラえもん』の出来杉君、という答えが返ってきます。
(出てこなければこちらから提示すると「あ~」という反応が返ってきます。)19300001365695131963215825378_950

  • 「僕」はコムラサキを標本にしたとき得意がってエーミールに見せびらかそうとしたけど、エーミールは単純に「すごい」とは言わなかった。「僕」の「自分の獲物に対する喜び」って、何だろう。「僕」の求めたものとエーミールの求めたものは、どこが違うんだろう。
と問いかけます。すこしわかりにくい問いかけですから、生徒の顔を見ながらわかりやすく説明してあげる必要があります。

すると生徒は
  • 「僕」は蝶よりも「手に入れる」行為に価値を求めているのに対し、エーミールは蝶そのものの価値を求めている。
ことに気づく生徒がいます。なかなか言葉にはできないと思いますから、指名しながら補ってあげるとよいでしょう。

「僕」がコムラサキをエーミールに見せたのは、家が近所だったからばかりでなく、「僕」とは経済的にほぼ同等で、「僕」は気持ちを共有できる人物と考えたからなのですが、二人が蝶に対して求めていたものはまったく違っていたことに気づかせます。

  • 「僕」が蝶を手に入れたい、というのは、珍しい蝶が欲しいんじゃなくて、「手に入れたい」という気持ちが大事なんだね。次の時間は、いよいよエーミールの蝶をゲットしてしまう場面だ。これが自分のコレクションを壊してしまうことにつながってくるんだね。
と言って授業を終わります。


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この教材は7時間扱いで、次の指導を行うことになっています。

  • ウ 場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み、内容の理解に役立てること
  • エ 文章の構成や展開、表現の特徴について、自分の考えをもつこと。
  • オ 文章に表れているものの見方や考え方をとらえ、自分のものの見方や考え方を広くすること。
更に「別の人物の視点で書こう」で2時間プラスされます。

「別の人物」は、このテキストではエーミールと母親しかいません。ですからこの二人のどちらかを選んで書くことになります。

後に評価の観点を述べますが、それより先に「僕」の視点という色眼鏡を廃した「僕」の実像を知っておかなくては、別の視点をもつことはできません

まず「僕」の視点から描かれた物語を知ることから始めます。

第1時間目 通読 読後感想から単元を通しての追求課題をもつ

1時間目は、単元を通しての学習のねらいを持つことです。
そのためにまず最初から最後まで教師が範読し、感想を書かせます。
感想の中から
  • なぜ最後に「ちょうを一つ一つ取り出し、指で粉々に押しつぶしてしまった」のか
という疑問が生まれるように、展開していきます。

まあ、この学習問題は、特に何もしなくても必ず生徒から出てくるものだと思います。

この疑問が出やすくなるように、場面が目に浮かぶように、難語句の意味を補いながらゆっくり範読していきます。

第2時間目 プロローグから、いつ・どこをつかみ、主人公はどういう人間だったか知る

「なぜ最後に『ちょうを一つ一つ取り出し、指で粉々に押しつぶしてしまった』のか」を知るためには、どういう物語か知ること、そのために「いつ・どこ・だれ」をはっきりさせる必要があることを告げます。
これまでの文学的文章教材の多くは、戦争教材以外、生徒の身近にありそうな話でした。そこで、そういった先入観を壊し、テキストに忠実に読む態度を培うのが本時の目的です。

「いつ」は、一日の中のいつか、一年の中のどの季節か、いつの時代か、の三つを明らかにします。

「いつ・どこ・だれ」がわかる箇所をプロローグの中から探し、傍線を引かせ、考えさせます。

いつ

「いつ」は、夕方から日没頃まで、蛙が啼いていますから季節は初夏です。
ランプを日常的に用いていますから、日本で言えば明治時代の話だと言うことがわかります。
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どこ

「どこ」は、北海道よりずっと北に位置するヨーロッパの高緯度地方です。

「末の男の子が『おやすみ』を言った」時間は日没直後です。
日没までに夕食を済ませ日の入りと共に寝てしまうと言うのは中世までの生活習慣で、近代以降ではありません。つまり、いくら小さな子どもだといっても、日没とともに「おやすみ」を言うはずはないのです。
しかし日没が午後9時頃だったら話は違います。北欧では初夏の日没は午後9時頃で、ここから高緯度地方ということがわかります。
登場人物の名前から考えてヨーロッパ文化圏でしょう。

だれ

「だれ」は「私」と「客(友人)」です。
二人は喫煙していますから成人しています。また「私」には数人の子供がいて、下の子供をきっかけに「幼い日の思い出」が語られることから、その子供は、おそらく小学生程度でしょう。

とすると「私」は30歳以上と考えても良いと思います。自然に「客」も同じくらいの年齢と考えられます。

「私」も「客」も幼年時代「ちょう集め」をしていました。
標本を「ピンの付いたまま箱の中から用心深く取り出し、羽の裏側を見た」とありますから、客は標本を扱い慣れていることがわかります。

そして「客」は「熱情的な収集家」であり「自分でその思い出をけがしてしまった」と言っています。
これが良い思い出ではないことは「不愉快」そうに見える態度や「もう結構」と早口で言った口調からもわかります。

この「その思い出」が次段落以降で語られる物語の内容です。

ここまででだいたい、授業の前半が終わると思います。

「では、ここから『客=友人』の話が始まるわけです。ですからプロローグの『客=友人』は『僕』になります。」と押さえます。

こんなことは言わなくてもわかると思いますが、中には混乱する生徒もいますから、一応押さえておきます。

回想部分の最初の段落を読み
  • 「八つか九つのとき」とあるから、最初の部分からたぶん20年くらい前の話だね。当時のこの国の教育制度は日本と同じじゃないけど、日本で言えば小学校の中学年くらいかな?翌年「十歳ぐらいになった」とあるから小学校4~5年生だね。
と言い、ちょう集めに対する「僕」の気持ちがわかる所に線をひかせて授業を終えます。


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