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〇 市販の単元プリント等の問題・解答は不完全なことがある

 教科書の教師用指導書って、誰が書いているんでしょうか。

 教科書会社が、教員に採択前の教科書を見せることが不正と言われる昨今です。
 現職の学校の先生ではないことだけは、なんとなくわかりますね。
 
 今はどうか知りませんが、その教科書の系列の大学の先生に連なる院生等が作っていたという噂がありました。
 実際に生徒を教えた経験がない人が作った指導案って、どうなんでしょうね。

 現場の経験のない大学院生が作るのですから、その通りやって授業がうまくいく筈はありません。

 では、単元プリントなんかは、どうなんでしょう。

 同じ教材で同じような問題があっても、解答が微妙に違う
 ……幾種類もの単元プリントを比較してみると、よくあることです。

 例えば国語の場合、
 「枕草子」のような超有名教材ならば、解答にほとんどブレはありませんが、
 現代文の文学作品等の記述式問題には、「え?これでいいの?」と思うような解答例もあります。

 問題を作っているのは、その作品の研究者ではありませんし、
 例えば進学塾の先生では決して答えないような解答例もあります。
 ……本当に、問題作成のプロが作ったの?と思うこともあります。(個人的な意見です。)

 中には、単元プリントに書いてあるテクスト以外の部分を知っていなければ答えられない、明らかに問題として不適切なものが出題されていることもあります。

 国語以外の教科はどうなんでしょうね。

 定期テストの問題として単元プリント等の問題を使用する場合、
 問題文をもう一度真面目に読み直し、自分で問題を解いてみることが最低条件です。

 そのままコピーをして使った場合、責任を問われるのは定期テストの問題作成者です。
 「単元プリントにこれが正解になっていたから」という理由で正解を決めるのは、
 私は定期テスト作成者としてだけでなく、
 教師として、考える権利も義務も放棄したセリフだと思います。

 生徒のみなさんも、「この問題集にはこの答えで正解と書いてあるよ」といって、先生に申し出る前に、
 自分の答えが正解かそうでないか、自分の頭でしっかり考えるくせをつけましょう。
 それが「考える力」ですよ。

〇 「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる問題」の落とし穴

 そもそも「わかる」状態と「できる」状態との間には距離があります。

 特に英語や数学の場合、授業中どんなに「わかる」状態にしても「できる」状態にまで持っていくことは、授業時間内では難しいと思います。

 多くの塾では、学校で一応「わかる」状態になっている生徒を「できる」状態にまで高めることで利益を得ているのではないでしょうか。
 ここが学校と塾との違いの一つですね。

 「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる」というのは、「できる」状態にまで力が高まった状態をいいます。
 いくら授業中その生徒ががんばったとしても、その後の学習で「できる」状態になっていなければ低い評価となるのはあたりまえのことです。

 かと言って「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる」という気持ちを持たせるための問題というのもあります。

 例えば、国語科では1~2年の定期テストで、既習の漢字の中から出題範囲を決め、配点を高めに設定している学校もあります。
 加えて文法の配点も高めに設定しています。

 漢字や文法は、自分で真面目に頑張らないと解けない問題です。
 漢字と文法の配点を高めれば、
 「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる」ように設計したと考えても良いと思います。

 また、「真面目に頑張った生徒」を認めるために、毎日の提出ノートで評価すれば十分であるという考え方もあります。

 そもそも、真面目に頑張れば力が発揮できるのでしょうか。良い成績がとれるのでしょうか。

 真面目に頑張ったからと言って、良い成績がとれるとは限りません。
 (逆に真面目に頑張らなくても良い成績がとれる生徒はいます。)

 ですから3年生のテストの出題比率や内容は、高校入試に準拠するのがよいでしょう。

 「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる」ために、授業で扱った内容や配布したプリントの問題をそのまま出すこともどうでしょうか。

 1問くらいならむしろ刺激があっていいと思いますが、何点分くらいが限度でしょうか。

 国語や英語、数学等の場合「授業で教えてきたこと」とは、授業で取り扱ったテクストをもとにしています。
 生徒は、そのテクストの内容に注意が向くでしょう。

 異なるテクストでの応用がきかないのでは学力がついているということにはなりません

 そして何より大切なことは、テストの解答を考える中でも、生徒は成長しています。

 「生徒を成長させるテスト」が良いテストだと私は考えます。

〇 上位層や下位層の人数が多くならない(正規分布になる)問題の作成法

 「絶対評価」をタテマエとするなら、こちらが求める基準の問題を作成しなければなりません。
 しかしハッキリ言って、これは無理です。
 (1日が50時間くらいあって給料が今の3倍以上になれば作れないこともないかもしれませんが…。)

 しかし、絶対評価に耐えられなくても、せめて点数を正規分配曲線に近づけたいと願いがあります。

 そのためには、まず問題の難易度を5段階に分類しておきます。
  •   ランク1 学力の低い生徒でもできる難易度の低い問題。
  •   ランク2 ランク1とランク3の中間の問題。
  •   ランク3 中位くらいの生徒ならできそうな問題。
  •   ランク4 ランク3とランク5の中間の問題。
  •   ランク5 上位10%未満の生徒しかできない難易度の高い問題。
 レベルの設定は、各高校の受験生を想定するといいかも知れません。
 ランク5は偏差値が最も高い高校の受験生が苦しむ程度、ランク3は中堅で一番志願者の多い高校程度、というように……。

 平均点を50点にするのは、比較的容易です。
 ランク1とランク5の問題を50点ずつとし、ランク1の問題を少し多めにすればいいのです。
 しかしこれではフタコブラクダになってしまいます。

 これを正規分配曲線の形に近づけるためには、ランク2の問題を増やすことです。
 すると、同時に平均点も跳ね上がります。

 正規分配曲線に近い結果を出すには、ランク1~5の問題を、一定の比率で混ぜると良いことは簡単に理解はできます。
 しかしこれは、ものすごく難しいことです。

 そのために、作成したテストを全員が見て、予想得点を考えていると思います。

 このテストの平均点は何点くらいになるか、ベテランの先生に相談しながら考えるとよいでしょう。
 
〇 起こりやすいミスのチェックリスト

<誤植パターン>
  •   記号のミス「(ア)の次の問題が(ウ)」、「(1)の次も(1)」など。
  •   解答欄や名前欄がない。
  •   タイプミス「眠かかった」。
  •   図から選びなさいという問題で「図」がない。あるいは、図が対応していない。
  •   図や写真が汚すぎて見にくい。
  •   テスト範囲外からの出題。
  •   正解がない。
<問題、解答の内容パターン>
  •   解答欄がせまい。
  •   半角、全角が混合している。
  •   同じ学力を測る問題が何問もある。
  •   問題量があまりに少ない。(50分テストなのに、20分でほぼ全員が終了してしまう。) または問題量があまりに多い(最後まで問題を解いていない生徒が1割以上いる。)
  •   難易度があまりに難しい。平均点40点未満になる。
  •   指導内容とかけ離れた問題構成になっている。3年生の場合は、入試問題とかけ離れた問題構成になっている。
<ミス発見のために>
  •   問題ができたら自己チェック(自分で問題を解く)すること。間違っても単元プリント等の解答を鵜呑みにしない。
  •   自己チェックを行った後、初稿入稿3日前に、国語主任を含む少なくとも3人以上の先生にはチェックしてもらうこと。本当は国語科の残りの4人全員です。(初稿入稿当日に「これ見て」というのは、ジャイアニズムです。)
  •   テスト問題作成は、計画的に進め、1ヶ月前の印刷所渡しには初稿を完成させる。
 テストは「もし間違っていたら、その場で訂正すればよい」では決して済まされません。
 生徒は、間違った問題に時間をかけてしまうかもしれないのです。

 また「この問題、正しいのかなぁ」と思いながらテストを受けることになるかもしれません。
 これでは、生徒の学力を正確にはかることができません。
 (それ以上に、「何が『生徒一人ひとりを大切に』だ。生徒をバカにしてるのか…。」と思います。)

<その他>
  •   漢字の誤答等、正誤が明らかな問題に対する採点方針は、テスト前から伝えておき、問題用紙にも明記する。
  •   各クラスを巡回する時、とにかく追加説明しなくて済む問題をつくる。
  •   訂正がある場合は、試験監督に迷惑がかからないように工夫する。
  •   不登校の生徒への配慮を絶対に忘れない(すべての教材、授業ノート等がテスト以前に渡っているか)。


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