もし、保護者からいじめの相談があったら…
また「ちょっと変だな」と思っても、
そうこうしているうちに家庭から「お話ししたいことが…」と連絡が来ることがあります。
そんなとき、どうしたらいいでしょう。
- 普段の子どもの様子を熟知しているならば、いつもと違う子どもの状況を敏感に感じ取ることができる
また「ちょっと変だな」と思っても、
そうこうしているうちに家庭から「お話ししたいことが…」と連絡が来ることがあります。
そんなとき、どうしたらいいでしょう。
以下にその対応例(大森俊彦「保護者とのかかわり」(『児童心理 いじめの予防と早期解決』H18 金子書房))を述べます。
実際はケースバイケースですから、学年主任や生徒指導主事の先生を中心にして、しっかり腹を据えてかかりましょう。
1 傾聴し、信頼関係の構築を図る。
- 「いじめは絶対に許さない」「子どもを必ず守る」「いじめを一緒に乗り越える」という固い決意をもって親と接する。
- 親が、担任や学校への批判や責任を追及してきても、弁解や反論は絶対しないで、話を十分に聞く。(つらいところですね。)そして、話の要点を「お母さんがおっしゃりたかったことは~ですね」と確認する。(すると、批判や追及がそれていくことがおおいようです。)
- その後、内容を文書にまとめ、校長・教頭・生徒指導主事に提出する。
- 話をする場合は、一人ではなく学年主任や生徒指導主事、教頭に同席してもらう。
- いじめがあったことに気づかず、不適切な対応があった場合には、素直に認めお詫びをする。時には担任を責め、エスカレートしてくる場合があるので、必ず責任を持って解決することを伝え、行動を起こす。
2 迅速な対応と正確な事実確認を行う。
- 一回目の面談後は、すぐ校長・教頭に報告し、指導助言を求め、協力体制をとってもらう。
- 翌日には、本人の安全確保と人権を守る措置をすぐにとり、加害者と被害者、周辺の子どもから正確な情報収集を行う。
- その後、関係者を立ち会わせた実況検分を行い、十分なすりあわせをして時系列的に記録しておく。
- この段階では、親と子どもに対して、絶対に決めつけや説教、注意をしないで、あくまでも冷静に客観的に対応する。
- 次回の面談前に、学級内の人間関係と新たないじめの有無、担任の学級経営のあり方についてもう一度振り返り、課題と成果について自己評価し、校長・教頭に報告する。
- 二回目の面談では、親に日記や破損した衣類、診断書、写真等の証拠品などがあれば持ってきてもらい、裏付けと補強をする。
- 親には、担任から、調査の内容と進捗状況、生徒指導会議で協議された対応策を説明する。
いじめ発覚後、どのような経過をたどって「一件落着」となるのでしょうか。まず、その案件に対する対応の流れを考えてみましょう。
もし、いじめが発覚したら…
1 事実の確認
まず、事実を確認します。
被害者、加害者双方の意見を聞き、感情を交えずに、起こったこと行われたことを5W1Hに注意して明らかにしていきます。
この時の教師の公正かつ冷静な、また受容的な態度が、子ども達の信頼を得ることにつながります。
特に大切なことは、被害者がどのような痛手をこうむっているのかを聞き出すことです。
苦しい胸の内を吐露することで、被害者の精神的な安定が得られます。
苦しい胸の内を吐露することで、被害者の精神的な安定が得られます。
加害者は自分が不利になることを避けるため、事実の隠蔽等を図ります。
加害者が複数いるときは、同時に別々の場所で聞き取りを行い、その後事実を照合していくといく必要があります。
そのためには学年内の協力が必要です。
最終的には、子どもが自らを振り返り変革していける指導、心から反省し謝罪できる指導を目指すわけです。
そこで、事実についての判断を、当事者である子ども自身に行わせることも大切でしょう。
2 被害を受けた児童生徒の意志を生かし、指導法を探る。
どういう方針や方法で相手を反省させ再発を防止できるのか、指導のあり方について検討します。
教師の価値観で「こうすればいいはず」と決めつけるのではなく、
「自分は教師にこうしてほしい」という被害者の意志を引き出し、指導にあたることが大切です。
被害者やその保護者が、学級での解決や事実の公表を望んだら、
教師は児童生徒を明らかにし解決をめざすべきです。
しかし、その同意がないのにいじめの事実等を公表するのは時期尚早です。
功を焦って被害者やその保護者との関係をこじらせてはいけません。
3 被害者をこれ以上傷つけずに、加害者にその行為を反省させる。
加害者を指導したせいで、かえっていじめが潜行してしまい、被害が深刻となる場合があります。
加害者に被害者の苦痛をわからせることが指導のポイントです。
ロールプレイの手法を用いた指導が効果的と言われています。
4 事後の助言を行う。
対人関係能力が獲得できていないことから被害者・加害者になってしまうことが多いものです。
そこで、いじめの指導が完結したところで、対人関係の結び方について助言しましょう。
参考文献
・猿田恵一「いじめを許さない・作らない教師」(『児童心理 いじめの予想と早期解決』H18 金子書房)
・酒井 徹「いじめ解決のための具体的な関わり」(同上)
保護者への対応はどうする?
1 いじめ被害者の親への対応
【ポイント】
育ち直し・リセットを行い、子どもと親からの信頼を取り戻す。
- 子どもと親の心の状態と性格(カッとなる、冷静、思いつめる、体制の有無、被害者意識等)をよく知った上で対応する。
- してほしいことやしてほしくないこと(嫌なこと)など、親子の要求や条件を詳しく聞くと共に、被害者にどんな権利があるかを教師が箇条書きにまとめ、訴える権利や賠償請求権を行使するためには正式文書と証拠物件を用意するとよいとのアドバイスをする。
(事を荒立てない、というのは学校の都合です。被害者が加害者を法的に訴えても、学校は痛くもかゆくもありません。) - 放課後や土日に、現場で加害者と被害者の両方の当事者と教師とが立ち会い、ロールプレイのようにして、実際にいじめを行った通りに再現する。また、加害者と被害者の立場を交代して行う。(指導的観点もある。)
- 心のケアとして、不登校や自殺、人間不信、報復障害等の二次被害を防止する手だてを第一に考える。
2 いじめ加害者の親への対応
【ポイント】
証拠をもとに事実確認をし、今までの担任の関わりかた経過をきちんと説明し、納得してもらう。
- 親子できちんと基本的人権と生命尊重について話し合った後、親が子どもに対し、加害者が償う責任(自分の過ちを心から謝る、当然のペナルティーを受ける)を果たさなければならないことを話すようアドバイスする。
- 親には、自分の子どもを指導監督する義務があり、その義務を怠ったからいじめたをしたので、親として相手に謝罪をし、損害賠償等の請求には誠意をもって応ずるように話す。
- いじめはどの段階なのか(いたずら→悪ふざけ→嫌がらせ→いじめ)といじめの形態を親子、教師で確認する。(そうすることで、加害児童生徒に対するケアと指導が容易になる。)
- 安易な仲直りや喧嘩両成敗的な処理をすることで、子どもの心にしこりや不満を残したままで放置しない。心と形で償いを親子でするように、きつく学校が指導する。
- 学校は、管理下で起こったいじめについては、理由は何であれ安全保持、指導監督、学習保障の義務に関しては全面的に責任を負わなければならないことを親に説明する。また、暴行傷害や恐喝、生命の危険等、あまりにも度を超したいじめについては、懲戒や専門機関と相談した上での措置を執ることを説明する。
参考文献 大森俊彦「保護者とのかかわり」(『児童心理 いじめの予想と早期解決』H18 金子書房)
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