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イソップ物語に『牛をうらやむカエル』という話があります。

ある日、一匹の蛙が野原を歩いていると、一頭の牛に出会いました。
蛙は牛の大きな体を見て驚き、うらやましくなりました。
そして自分も牛のように大きな体になりたいと思いました。

蛙は家に帰り、妻と子どもの前で「お父さんは、牛のように体を大きくすることができる」と自慢し、体を膨らませました。
「ぜんぜん牛みたいじゃない」と妻と子どもはからかいました。
そこでまた蛙は大きく息を吸いこんで、体を膨らませました。
「まだぜんぜん牛みたいじゃない」

……これを何度も繰り返すうちに、蛙のおなかはパンパンに膨れ、
とうとう破裂してしまいました。

宿題もなく、クラス担任もなく、中間・期末試験もない……
学校の「当たり前」を見直し、
メディアや教育関係者、保護者などから注目されている東京都の麹町中学校があります。

この麹町中学校の実践に倣って、
いくつかの中学校の学級担任制や宿題を廃止したりしている学校もあるようです。
また、来年度に向けて、何かできることはないかと検討を始めた学校もあるかと思います。

宿題について考えてみましょう

実際に提出されたノートを見ると、単なる作業になってしまっている生徒が多いのは事実です。
漢字学習帳も提出ノートも、「やっつけ仕事」になっていると感じることがあります。

これを何とかしよう、というのは、良いことだと思います。

麹町中学校では、宿題を廃止したと言っても、ゼロにしたというわけではありません。
「宿題」という言葉を使うか「自主学習」等の他の呼び方をするかの違いです。

学校から提出を義務づけられた家庭でおこなう課題を「宿題」と呼ぶのなら、
「宿題」に対する学校の対応は次の二つです。
  • A 提出義務のある課題(宿題)出さない
  • B 提出義務のある課題(宿題)は出す
Aを行うと、みんな一生懸命家庭学習に取り組むようになるのでしょうか。
一生懸命に家庭学習をやるようになる生徒と、まったくやらなくなる生徒が二極化することは目に見えています。
そして、家庭学習に力を入れる場合は、塾や家庭教師に流れるご家庭もあることでしょう。
これは私たちが望んでいることではありません。

Bの場合は、「やっつけ仕事」にならないための工夫が必要です。
そのために、やる内容を「自主的」なものとして生徒に任せてしまう方法がよく選ばれています。

このやり方には二つの問題があります。

一つは、その生徒の学力を向上させるのに必要な内容と、その生徒がやりたがる内容とが一致しているとは限らない点です。

一致していない場合はいくらやっても成績は上がりません

そしてもう一つは、どのように評価するのか、です。

提出したかしないかだけで評価しては「やっつけ仕事」でも良いと言うことになってしまいます。

しかし、一人一人の自主学習の内容を丁寧に評価しようとすればするほど、
その評価を生徒にフィードバックしようとすればするほど、

私たちが提出ノートを見ることにかける時間や労力が膨大に膨れ上がります。

麹町中学校は「番町小→麹町中→日比谷高→東大」と言われる有名進学校です。
ここに通うために越境入学する生徒もたくさんいるそうです。
公立とはいえ、スタッフや予算、学校設備もそれなりであることは想像に難くありません。

麹町中学校は「大きな牛」のような学校なのです。

私たちがそれを真似しようと思っても、
おなかを膨らませて破裂してしまうのが関の山
……ということにならないといいですね。

では、どうしたら良いのでしょう。