③ 生徒(代表者)の考えで決める
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前提
  1. 席替えの目的・意図を、生徒全員が共通理解している必要がある。(例:互いに注意し合えるように、等。毎回変わっても良い。)特に代表者はきちんと理解していなくてはいけない。
  2. 代表者は、班長レベルの生徒全員が認めるものでなければならない。また選ばれた代表者は、席替えの目的・意図を理解し、クラス全体について考え公平・構成に実践しようとする意思のある者でなくてははならない。
  3. 決定の過程で、代表者以外の者は代表者に干渉してはいけない。
メリット
  • 「自分たちの代表が決めた」という意識を持つことができる。
  • 教師が把握していない人間関係等を反映させやすい。
  • 教師の権限委譲であり、代表者には特にリーダーとしての意識や自主性を培うことができる。
デメリット
  • 前提を含め、決めるまでに時間と手間がかかる。特に代表者が相談する時間を確保してやることも難しい。
  • 特に代表者の選出に細心の注意を払わないといけない。代表者は誰かの傀儡であってはならないからである。
  • 代表者の人数が揃わない可能性があり、揃ったとしても代表者間の力関係に左右されることがある。その場合、一部の代表生徒の恣意に流れるため、反発を生みやすい。
対策
まず班長を決め、班長の合議により席替えが実施されることや、席替えの決め方などを全員に周知しておくことが必要です。
その際、合議には他者が介入してはならないことを指導し、公正性を担保するために合議に際しては教師が同席する必要があります。
決定された席は教師の許可制にするとよいでしょう。どのような決め方をしたにせよ、最終責任は教師にあるのです。

補足
決めるのに時間がかかるのが一番大きな問題です。
代表者を選ぶので1時間以上、更に代表者が集まって決めるのに1時間以上が基本です。
更に代表者が決めている間、他の生徒は何をしているか考えなくてはいけません。
安易に「休み時間に決めろ」と言っても、休み時間にそんな時間はあるはずもなく、放課後だって部活等で生徒は忙しいのです。
また、「いつもいつも班長は同じ人」というのは、どうなんでしょうか。
公的に認められたリーダーを作ることにつながります。

「自分たちの代表が決めた」ということはわかっていても、自分が決めたわけではありませんから、自主性が育つわけではありません。
むしろ自己中心的な生徒にとっては、教師より不満をぶつけやすくなりますから注意が必要です。
また、一部の生徒が傀儡としての代表者を送り込もうとする危険があります。

修学旅行の部屋割りなど、この宿舎係を中心に安易にこの方法でやってしまい、トラブルの元となることが多いようです。
トラブルになった場合、トラブルが起こらないように担任(または宿舎係担当職員)はどのような指導をしたかが問われます。

④ 複合型(例:③で原案を作り、①で修正する等)

メリット
  • 人間関係や学力等に関するコントロールを「自分たちの代表が決めた」とう意識が持てる。
  • 教師が決定したため反発がでにくい。
  • 教師が把握していない人間関係等を反映させやすい。
デメリット
  • 非常に時間と手間がかかる。
  • 教師が大幅に修正する等の強力な介入を行うと代表者としての立場がなくなる。
  • 教師が修正の理由を説明したとしても反発を受ける場合がある。
  • 時間がかかるため、他生徒の代表者への干渉が予想され、代表者に過度の負担がかかる。
対策

対策としては、生徒が提出したものに対し、今回の席替え(班編制)の意味や目的を満足させることができるているかで評価し、満足できない場合は「差し戻し」を行う方法があります。
しかしこれは更に時間がかかる作業です。
教師がダメ出しををするだけで改善案を示さない場合は、代表者のモチベーションを下げてしまいます。
従って、③で述べた、教師が同席して決定していく方法が適していると思います。

補足

③と④の違いは、決める話し合いのときから教師が参加するか、生徒が決めた後教師が決め直すか、という違いになります。

いずれにせよ教師をトップに据えた集団指導体制ともいうべきものです。

この場合、気をつけないと生徒のリーダーと馴れ合いとなり、最悪の場合、いつの間にか教師が傀儡となってしまう(あるいは生徒が教師の傀儡としてしか機能していない)ことがあります。
注意しましょう。

パターンは③→④ばかりではありません。
②→③→④の方法等、さまざまあります。
費用対効果をふまえつつ、最適の組み合わせを考えてみてください。

総括

どのような活動でも、必ずコストがかかります。時間もコストです。
いくら素晴らしいやり方であったとしても、完成させるまでに時間がかかったのではダメなのです。
より少ないコストで最大の効果が得られるように考えていきましょう。それが「対策」の基本です。
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座席の配置としては、男女市松模様に並べるのが一般的です。
机と机の間を離すか、二人一組で机を離さずに列になるようにする方法もあります。
また、縦横の格子状に机を並べるのではなく、教卓を中心に議会や大学の講義室のように放射状に机を並べることもあります。
座席の並べ方にもいろいろあるのです。

最近はアクティブラーニングとの関連でグループ学習が盛んになり、グループ学習の状態に速やかに移行できる座席配置も考えなくてはいけません。

決め方にせよ、席の並べ方にせよ、それぞれのやり方にはすべて理由があり、目的があります。
「今までそうしているから」「他の先生がそうしているから」というだけで、何も疑問を持たないというのはいけないと思います。

他の方法が考えられないというのは、思考力や判断力が低い先生、といわれてしまいます。
座席決めに限らず、教科指導でも学級指導でも、選択できる持ち駒を一つでも増やして、目的に応じたメリットとデメリットを考え、実行していくようにがんばりましょう。