十種神宝 中学国語の基礎・基本

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カテゴリ: 教師の心得

このブログに書かれた内容を、更に詳しく説明した冊子を作りました。
興味のある方は、こちらをご覧下さい。

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現代文学とは、自分と同時代の文学、現在の文学という意味です。
普通、第2次世界大戦の終わった 1945年以降の作品を指します。

しかし、戦後70年以上も経っています。
現代文学の舞台となる「現在」と言っても、
第2次世界大戦以降、さまざまな時代がありました。

ここでは、教科書に載っている作品は「いつ」の時代の話なのかを解説します。

それぞれの時代に何があったかを知り、登場人物たちが、どんな人生を送ってきたのかを考え、読解に役立てましょう

大人になれなかった弟たちに……(中学1年)
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この作品は、終戦直前(1944~1945年)を振り返る物語です。

〈ヒロユキ〉がなくなったのは1945(昭和20)年、終戦の年です。その前年からの様子が描かれていますから、1944~1945年までの物語です。

「福岡から南へ二十キロほど行った、石釜という山間の村」とありますから、場所は福岡県が舞台です。

〈僕〉は戦後ずっと「このこと」、つまり〈母親〉や栄養失調で死んでいった〈ヒロユキ〉のことを思い続け、その後の時代を歯を食いしばって生きてきたのでしょう。

字のない葉書(中学2年)
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「字のない葉書」は戦中・戦後(1945~1950年頃)を振り返る物語です。

はっきり年代が書かれているのは後半のエピソードで、1945年の終戦の年です。

では物語の〈現在〉はいつでしょう。

後半のエピソードで「あれから三十一年。父はなくなり、妹も当時の父に近い年になった」とあります。
ここから終戦の年から31年後の1976年が〈現在〉ということがわかります。

6歳だった〈妹〉は31年後の〈現在〉37歳になっています。
ですから後半のエピソードの〈父〉は30代半ばということでしょう。

一方前半のエピソードで〈邦子〉は「女学校一年で初めて親元を離れ」とあります。
後半のエピソードで〈邦子〉はまだ一人暮らしをしていませんから、1945年より後の話です。

女学校というのは高等女学校(今の中学校)か女子専門学校(今の高等学校)のことです。
女学校は1947年(昭和22年)の学制改革により廃止されました。
ですから〈邦子〉が女学校に入学したのは終戦直後の1946年ということになります。
この時〈邦子〉は高等女学校なら12歳、女子専門学校なら16歳でした。

「父は六十四歳でなくなったから、この手紙のあと、かれこれ三十年付き合った」とあります。
ここから、〈父〉は1946年から30年後の1976年になくなっています。

このことから〈現在〉は〈父〉が亡くなってからすぐ後のことです。

年代を整理してみましょう。
1945年の終戦直前〈妹〉は甲府に疎開しました。
その翌年、終戦直後1946年に〈邦子〉は女学校に進学し一人暮らしを始めます。
〈妹〉の疎開から31年後の1975年に〈父〉は64歳でなくなります。
作品の〈現在〉は1975~1976年です。

〈父〉の死後、〈父〉のことを思い出して書いた作品と言うことになります。
(この作品世界の設定です。実際の作者の経歴とは異なります。)

この時〈妹〉はアラフォー、姉である〈邦子〉は40代超えで、もし女子専門学校に進学していたのなら50歳近くです。
おばさんになり、近年〈父〉を亡くした〈邦子〉が、少女だった頃の〈父〉の姿を思い出しているのです。

「不器用な父の、家族への愛情」に気づき驚いたのはもう三十年以上も昔の話。
〈現在〉は、その時の〈父〉の姿を懐かしく思い出しているのではないでしょうか。

握手(中学3年)
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「握手」焼け跡時代(1945~1950年頃)を振り返る物語です。

〈私〉が〈ルロイ修道士〉の天使園で暮らしたのは「中学三年の秋から高校を卒業するまで」ですから15~18歳の出来事です。

この高校時代の回想のなかで闇市が登場します。
闇市があったのは1945~1950年頃です。
また有楽町は浅草で映画館等が復活したのは終戦直後の1946年からです。
この頃のエピソードが物語の中心になります。

作品の〈現在〉は〈ルロイ修道士〉が亡くなった翌年です。
〈私〉は前の年に上野公園の西洋料理店で〈ルロイ修道士〉と会った時のことを思い出し、その思い出の中で更に高校時代の回想を行っています。

作品の〈現在〉は〈ルロイ修道士〉が上京の折に使用した列車から、1982(昭和57)年東北新幹線開業以前のことだと思われます。

盆土産(中学2年)
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高度経済成長の時代(1960年代前半)の物語です。

物語の重要アイテムとして冷凍海老フライが出てきます。
冷凍海老フライが発売されたのは1962(昭和37)年。冷凍水産品の製造と販売を行っていた加ト吉水産(現テーブルマーク)が冷凍食品「赤エビフライ」を発売しました。
しかし当時、電気冷蔵庫は50%しか普及しておらず、当然冷凍食品を冷凍されたまま輸送する手段もほとんどなかったため、地方の人々にとってはとても珍しい食べ物でした。

東京では映画『三丁目の夕日』のように、東京タワーが建設され、東海道新幹線がつくられていました。
一方田舎ではアニメ『となりのトトロ』のように、ボンネットバスに車掌さんが乗っていて、家庭電話もほとんど普及していませんでした。

この時代は、道路や鉄道を作るとか送電線を張り巡らすとかの、生活や産業の基盤となる公共設備を整え充実させるインフラ整備が盛んに行われいました。
都会では工事現場の仕事がいくらでもあったのです。
主人公のお父さんも現金収入を求めて東京へ出稼ぎに出ていった一人でしょう。

アイスプラネット(中学2年)
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バブルの時代(1980年代)の物語です。

〈ぐうちゃん〉は「三十八歳。学生の頃に外国のいろんな所を旅していたらしく、気づいたときには僕の家に住み着いていた」人です。

戦争中はもちろん戦後も政府やGHQの規制により観光目的の海外旅行はできませんでした。
学生が自由に海外旅行に行くことが出来るようになったのは1960年代後半からです。
この頃は高度経済成長のまっただ中でした。
同時に安保闘争とか大学紛争と言って、社会の変革を求める学生運動が盛んになり、一方で自然と自由を愛するヒッピーとかフーテンとか言われる若者が増えました。
当時20歳くらいの〈ぐうちゃん〉もその一人です。
このことから〈ぐうちゃん〉は1940年代後半に生まれた「団塊の世代」です。
きっと〈ぐうちゃん〉は長い髪の毛を肩まで伸ばし、穴のあいたジーンズをはいて外国を旅行していたのでしょう。

作品の〈現在〉は、〈ぐうちゃん〉が海外旅行をしていた時代から20年ほど経っていますから、1980年頃です。
当時世の中はバブルに沸いていました。バブルで景気が良かったから〈ぐうちゃん〉はまた海外旅行に行けたのかも知れませんね。

この時〈悠君〉は中学生。ですから〈悠君〉は1970年半ば頃の生まれです。
この世代は「団塊ジュニア世代」とも呼ばれています。
〈ぐうちゃん〉やそのお姉さんである悠君のお母さんは団塊の世代ですから、つじつまがあいますね。

またこの世代は「氷河期世代」とも呼ばれ、就職の時期に日本は深刻な不景気に襲われたため、フリーターやニートなどの就職難民が非常に多い世代でもあります。
〈悠君〉のお母さんの「大人になっても毎日働かなくてもいいんだ、なんて思って勉強の意欲をなくしていったとしたら」という心配は当然です。

〈悠君〉は世界の不思議を自分の目で確かめることができたのかよりも、きちんと就職できて今も務めているのか心配になります。

時代がはっきりわからない物語
 
「花曇りの向こう」(中学1年)
舞台が関西地方であることまではわかりますが、時代は不明です。
駄菓子屋は1980年代以前にはそこらじゅうにありましたが、現在でも残っていますから、これによって時代を確定することはできません。

「星の花が降る頃に」(中学1年)
学習塾が一般的になったのは1965(昭和40)年以降から現在に至ります。複数の塾があり、それを選ぶことができ、校庭が広いことなどから、舞台は中小都市くらいでしょうか。

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電話は相手の表情が見えません。ですから、私たちの言葉遣いと声の表情がより重要になってきます。
相手の話す内容を正確に把握すると共に、要領よく相手に伝える話し方を心がけましょう。

そのために「5W1H」を意識することが大切です。When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)をしっかり聞きましょう。

電話を受けるとき

①呼び出し音が鳴ったら、すぐ受話器をとる。
左手に受話器、右手にペンとメモ用紙を用意する。

②学校名を告げる
「○○中学校(の○○)でございます。」
 呼び出し音が三回以上鳴ったら「お待たせいたしました。」五回以上鳴ったら「大変お待たせいたしました。」と言う。

③挨拶する
相手が名乗ったら、挨拶する。「いつもお世話になっております。」
相手が氏名を言わなかったら、氏名を聞く。「恐れ入りますが、どちら様でいらっしゃいますか。」

④用件を聞く
用件はメモし、最後にメモ内容を復唱する。
伝言の場合は5W1Hをきちんと押さる。「○○さんは、○○のため今日は欠席ということですね。」

⑤誰かに取り次ぐ
学級担任等に取り次ぐときは、用件を聞いてからにする。
電話を保留にする。

⑥電話を切る
 挨拶して、静かに受話器を置く。
 かけた人から先に受話器を置くのが原則だが、相手が切ってから受話器を置くのがより丁寧。

とっさの一言

相手が名乗らないとき
「恐れ入りますが、どちら様でいらっしゃいますか。」

聴き取りにくいとき
「恐れ入りますが、よく聴き取れませんでしたので、もう一度おっしゃっていただけますでしょうか。」

誰かに代わるとき
「ただ今、担任の○○に代わりますので、少々お待ちください。」
(「○○先生」と言ってはいけない。校長先生等の場合も、単に「校長の○○に」と言う。)

「電話するように」伝えておくと言うとき
「たしかに○○にお電話するように申し伝えます。」

取り次ぎ相手がそこにいないのとき
 「ただ今、○○はあいにく部活の指導に出ております。○時には戻る予定ですが、お急ぎでいらっしゃいますか。」

取り次ぎ相手がそこにいるが電話に出られないとき
「申し訳ございません。○○は他の電話に出ております。まもなくおわりそうですので、このままお待ちいただいてもよろしいでしょうか。または、お急ぎでいらっしゃいますか。>」

伝言を聞くとき
「○○と申します。お差し支えなければ、私がご用件をうけたまわりましょうか。」

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問1

A中学校ではキャンプの食材等を旅行貯金から支払うようになっています。
メニューであるカレーの食材の買い出しに行ったA先生の行動で不適切なものをすべて選び、記号に○をつけなさい。
  • ア 高くてもしかたがないと考え、食材を旅行業者を通して注文し、旅行後に一括して支払った。
  • イ 生徒の負担が軽くなるように、家庭科室にあるものは極力それを使うようにし、必要なものだけを現金で購入した。
  • ウ なるべく安いものが良いと考え、近くのスーパーでカードを出して支払い、ポイントもつけてもらった。
  • エ カレールウを買おうとしたが、必要個数がなかった。そこで、あるだけそのスーパーで買い、足りない分は少し高かったが違うスーパーで買った。
問2

4月に学年費で教材を購入しました。教材は一週間で納品され、同時に請求書が届きました。
ところが一学期中に支払うことができず、を二学期にまわしてもらいました。
これに対する正しい見解を一つ選び、記号で答えなさい。
  • ア 本来ならば納品日から30日以内に支払う必要がある。
  • イ 本来ならば請求書の受理日から30以内に支払う必要がある。
  • ウ 本来ならばその学期中に支払う必要がある。
  • エ その年度内に支払えば良い。
問3

給食費の督促状が封筒に入って係の先生から渡されました。
これを生徒に渡すとき、最も適切なものを次から一つ選び、記号に○をつけなさい。
  • ア 内容が内容なので、そのまま黙って生徒の机の上に置いておく。
  • イ 何か言うと他の生徒が聞いているので、生徒を呼び、黙ってこっそり手渡しする。
  • ウ 「大事なお知らせだから必ず家の人に渡してください」と言って、目立たないように手渡しする。
  • エ 「給食費の督促だから必ず家の人に渡してください」と言って、手渡しする。
  • オ 帰りの学活等で「給食費の督促状があるから配ります」と言い、名前を呼んで取りにこさせる。
問4

夜、消耗品として予算化してあった画用紙を明日使うことを思い出しました。何としても授業に間に合わせなくてはいけません。どうしますか。
不適切なものをすべて選び、記号で答えなさい。
  • ア 量販店がまだ営業しているので、急いで行って買ってくる。
  • イ 事務の先生に聞いてから、急いで量販店に行って買ってくる。
  • ウ 急いで業者に連絡し、何としても授業に間に合うように持ってきてもらう。
  • エ 使わなくてはいけない授業はやめて、使わずにすむ方法を考える。
問5

教科で高額な備品が必要になりました。あまりに高額なので認めてもらえそうにありません。
どうしますか。最も適切なものを一つ選び、記号に○をつけなさい。
  • ア どうせ認めてもらえないので、発注して事後承諾を受ける。
  • イ 今年の予算と来年度の予算を合わせてもらい、来年度まで発注を待つ。
  • ウ とにかくお願いし、ダメだったら来年度またお願いする。
正答と解説

問1 イ、ウ

これは旅行貯金から支払われます。一方、家庭科室にある消耗品は各学年の学年によって購入されています。従ってイは誤りです。

ウで、ついたポイントはA先生個人のものになります。旅行貯金は生徒から預かっているお金です。それを使って個人が利益を得ていますから、やってはいけないことです。
(旅行貯金をFXにつっこんでもうけるのと同じです。)

エは、カレールウの代金を合算して頭割りにすれば問題ありません。

問2 イ

「政府契約の支払遅延防止等に関する法律(旧:支払遅延防止法)」により、売掛により購入した場合、請求書の受理日から30日以内に支払う必要があるとされています。

「一学期に払えないから、二学期まで待って♡」というのは、甘え以外の何者でもありません。
とは言うものの、年度当初に様々なものを購入しなくてはならず、どうしても支払えないものが出てくるのは当然のことです。
年度当初しっかり予算の執行計画(支払計画)をたて、その学期(決算期)に支払えないとわかった時点で、請求書を出すのを遅らせるよう業者にお願いするのも一つの方法かも知れません。
それには各教科の協力が必要です。

問3 ウ

説明の必要はないと思います。更に確実なのは、生徒が家に帰った頃電話を入れることです。

問4 ア、イ、ウ
 
量販店では、学校関係の請求書は出してくれません。(中にはそうでない所もあります……。)
とすると現金で支払わなくてはいけません。

その場合、立て替え払いということになりますが、市の予算の場合、立て替え払いは認められていません。
従ってアは誤りです。
同じ理由で、事務の先生もOKを絶対に出しませんから、イも誤りとなります。

時々、業者の方を呼び出してこういうことをする先生もいますが、社会人として許されることではないと思います。

もし「持ってきてくれたら、今度の教材はお宅に落としてあげる」とか「ダメならもうお宅には頼まない」と行った瞬間に、犯罪行為となります。

使うとわかっていて準備していない方が悪いのです。

問5 ウ

アは、明らかに犯罪です。
また、予算は単年度決算ですので、2年にわたって執行することはできません。ですからイも誤答です。

予算は校長先生や教頭先生、事務の先生などが、学校全体を大所高所からみて決定していくものです。

どうしても必要と思うなら、個人の思いつきではなく、自分がいなくなっても後の人がそれを受け継いで何年かかけて説得していくのがスジです。

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問1
 A先生は、学年主任から忠告や注意を受けるときには、次のようなことを心がけています。不適当と思われるものを一つ選び、記号に○をつけなさい。
  • ア 忠告されたことは、忘れないようにすぐ手帳にメモしている。
  • イ 注意されたことが納得できなくても、感情的にならずに相手の話を最後まで聞くようにしている。
  • ウ 注意を受けたあとは、反省していることを態度で示すため、なるべく神妙な顔をして、口をきかないで仕事をしている。
  • エ 忠告を受けた内容が事実と異なり、誤解であったときには、チャンスを見て、誤解であることを話している。
  • オ 自分のミスを指摘されたときには、素直に「申し訳ございません」とわびるようにしている。
問2
 A先生は、小中連絡会の案内状を作成し関係者に交換便で送りました。ところがあらためて文面を見ると、会議の終了時間が1時間遅く書かれていました。このような場合○藤先生は校長先生、教頭先生にお詫びした後、関係者に対してどのようにするのがよいですか。次の中から不適当と思われるものを一つ選び、記号に○をつけなさい。
  • ア はがきで、終了時間が違っていたことをわびて知らせる。
  • イ 大人数ではないので、電話で終了時間を訂正してわびる。
  • ウ 終了時間を訂正した文書を作り、わび状と一緒に再度郵送する。
  • エ 開始時間は間違っていないので、当日会議前に知らせてわびる。
  • オ 終了時間を訂正した文書を作り、送信状にわびの言葉を添えてファックスで送る。
問3
 次は、「宿題をなくして欲しい」という保護者の説得の仕方についてS藤先生が考えたことです。中から不適当と思われるものを一つ選び、記号に○をつけなさい。
  • ア 相手との間に強い信頼関係がある場合は、多少くだけた言い方をするのもよいかもしれない。
  • イ 親しくない相手の場合は、相手と親しい人に頼んで助けを借りると効果があるかもしれない。
  • ウ 相手が自分と同格の場合は、自分より地位が上の人に同席してもらうのもよいかもしれない。
  • エ 説得に対して相手が感情的になった場合は、それ以上は続けず機会を改めた方がよいかもしれない。
  • オ 相手が自分の言い分に固執して説得に応じない場合は、むしろ相手のペースに乗った方がよいかもしれない。
問4
 A先生は教頭先生から「特に急がないが、この報告をまとめておいてもらいたい」と資料を渡されました。量が多く時間がかかりそうでした。A先生は時間があるときにと思ったのでそのままにしていました。ところが2~3日後に教頭先生から「昨日頼んだ報告はできたか」と聞かれ「まだです」と答えると、不満そうな顔をされました。今後このようなことをなくすためにA先生はどうすればよいですか。箇条書きで三つ答えなさい。
 
正答と解説

問1 ウ

ウは、いかにも「反省をしている」というアピールのようですが、「拗ねている」「反感をもっている」と受け取られても仕方がありません。
職場ではコミュニケーションをとることが大切です。その観点から「口をきかないで仕事をしている」というのは反抗的な態度と考えられます。

注意や忠告を受けるときの心構えは、素直な気持ちで受け止めることです。
「申し訳ございませんでした。今後、気をつけるようにいたします。」と素直に謝りましょう。
その時、泣いたり怒ったりして感情的にならずに、冷静に自分を見つめ直すことが大切です。

よく「私は悪くない」「○○先生のせい」「どうして私だけ」と考えることがありますが、見苦しいと思います。「誰に言われたか」ではなく「何を言われたか」を意識しましょう。また、相手の話を最後まで聞くことが大切です。

話の途中で、「でも」「それは」などと口を挟むと、相手の怒りに火に油を注ぐ結果となることがあります。

内容は忘れないようにメモしておきますが、相手の話した内容が間違っていた場合も、話が終わったあと別の機会に言います。(このときメモが威力を発揮します。)
当然のことですが、忠告・注意を受けたことをあとに引きずってはいけません。
極端に落ち込んだり、ふてくされたりすると、ほかの仕事に影響するので、なるべく気持ちを切り替えましょう。

問2 エ

発送した文書は校長名のもので、公文書扱いです。従って訂正も文書である必要があります。

そうでなくても出席者は案内された時間で予定を立てています。1時間早く終わることが分かれば他の予定を入れることもできたはずです。従って、当日知らせるなどは不適当ということです。

大人の都合で終了時刻が勤務時間外となることが予想されたとしても、勤務終了時刻を明記しておきましょう。(これは校長命令による出張扱いの会議ですから、時間外勤務を命ずることはできないのがタテマエです。会議開始時刻から終了時刻まで5分間、という非常識な通知は出さないことです。)

問3 オ

説得というのは、自分と違う考えの相手に自分の考えを納得させることです。
相手が説得に応じなければ何らかの方法で納得させなければいけません。

相手のペースに乗るとは相手の考えに合わせることになり、一歩間違えると言質をとられてしまいます。
いざとなったら「学年主任(教頭先生・校長先生)と相談してお答えします。」と言って持ち帰りましょう。
そして後日学年主任以上の先生と一緒に説得に臨みましょう。

問4
  1. 「急がない」と言われても一応の期限を聞いておく。または、できそうな日を言って教頭先生に確認する。
  2. 教頭先生の指示の仕方の癖を早く知るように努める。
  3. 時間がかかりそうな仕事を指示されたときは早めに取り掛かり、中間報告をするようにする。
「急がない」と言ったのだから、「できたか」と聞いたことに大した意味はないと考えられます。
そもそも、教頭先生(やエライ先生)の指示の仕方には癖があるものです。そのことを踏まえた観点からの答えられればよいと思います。

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目標に対し、教師の指導はどうあったらよいでしょうか。

生徒会や学級の係活動など様々な場面で「呼びかける」「伝える」という働きかけを見たと思います。
どの程度効果があったのでしょう。
また、効果があったとすればなぜ効果があったのでしょう。

目標値に対して実効性を持たせる方法が「手立て」です。

例えば「一年間、晩酌をしないことによって11㎏減量する」という行動目標をたてたとして、一年間実行してみたけど目標が達成できませんでした。
「こんなことなら禁酒するんじゃなかった。私の一年間を返せ!」というコストパフォーマンス最悪の、やらない方がましな活動になります。

目標に対して実効性をもたせるためには「行動計画」と「途中指標」が必要です。

特に数値化できる目標に対しては有効だと思います。
目標を達成するためのプログラムが「行動計画」であり、途中経過としてどのくらい達成できたかプログラムの各段階で検証するのが「途中指標」となります。
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例えば「体重を一年間で11㎏減らす」という目標を立てた場合「最初の一ヶ月で減らすことで2㎏減」「次の一ヶ月で更に2㎏減」というようにしていくのが行動計画と途中指標です。

途中指標の達成状況を見ながら、その都度「おやつも減らそう」とか「少しお酒を飲んでも、つまみを減らせばいいんじゃないか」というように次の途中指標を調整していきます。
場合によっては「晩酌をしない」という行動目標自体を見直すこともあります。

これをPDCAサイクルと言います。
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特に「一年間かけてこういうクラスにしたい」という目標に対して、この行動計画と途中指標は必須事項だと思います。

例えば「提出物100%」という目標を立てた場合、最初の一ヶ月間はどういう取り組みをして、何%くらいを達成するのか、次の一ヶ月間は何をしてどのくらいにするのかを計画させ、実行させ、失敗したらその原因を考えて計画を変更していくのです。

また、行動計画や途中目標とは別に日常の指導として「良い生徒を褒める」というものがあります。
評価的インセンティブですね。当たり前のことです。
評価的インセンティブを高めるには、生徒個人を呼んで褒めるのか全体の中で顕彰するのか等、様々な方法があります。より効果的な方法を選択しましょう。

長期計画をたてず、即効性のある指導も必要な時があります。
それは問題行動等のイベントが発生した時に評価できるものに対してです。

問題行動等に対しては、教師が「このようにしなさい」と言うことがあります。
教師の言ったことに対しては、すぐに必ず実行させなくてはいけません。

例えば「トイレにトイレットペーパーの芯を流さない」「人の靴を隠さない」等のマイナス要因に対する緊急性の高い生徒指導事案があり、「こうしなさい」と指示したとします。

「先生の指示を聞かない」事例を認めてはいけません。
これにより「やらなくてもよい」という意識が芽生え、教師の権威失墜が起こります。
ですから、この時は毅然とした指導をしましょう。

特に学年集会などで指導した内容は伝家の宝刀並の重い意味があります。

自分で指導する自信がないから学年集会でやってくれ、というのは卑怯な態度であり、プロ教師とは言えないと思います。

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「スリムなボディになる」という目的に対し「一年以内に体重を11㎏減らす」というのが目標(結果目標)だとします。
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しかしこれでは、具体的に何をしたらいいのかわかりません。
例え何かしたとしても、その方法で効果があったのかどうかわかりません。他者や環境が大きく影響する場合もあります。

一方「晩酌をしない」としたらどうでしょう。
やるべき時や場面、内容も決まっています。そして「できたかできなかったか」がはっきりわかります。

これが行動目標です。

行動目標とは、読んで字のごとく結果目標達成のために具体的な行動を伴う目標のことを言います。
行動目標を考えるには、期限(いつまでにやるか)と行動目標(何をするか)と成果(どうなるか)を明確にしておかなくてはいけません。

上の例の場合「一年間(期限)、晩酌をしない(行動目標)ことによって、10㎏痩せる(成果)」というように考えます。
この期限と行動目標と成果をはっきり生徒に自覚させることにより、より実効性のある指導となります。

また、学級目標の場合の行動目標は、個人に課せられた役割を果たすために必要な行動の場合が多いようです。
例えば「責任を持って任せられた係の仕事を行う」という行動目標は、学級の使命に照らし合わせて割り振られ、個人に与えられたもので、個人が自分で決めるべきものではないからです。

そして行動目標は、達成できたかできなかったかをきちんと評価していかなくてはいけません。
これは抽象的な要素が強い学校教育目標には難しいことです。

できたかできなかったかをはっきりさせることで結果目標である学級目標の達成を目指し、学級経営目標や学校経営目標の実現を目指さなくてはいけないのです。

(学校教育目標については、外部評価としてアンケートなどの統計的手法を用いていますけどね。これでモチベーションは上がるのでしょうか。)

例えば「二分前着席」という行動目標を持ったとします。

どういう状態なら達成できたと考えるのか、またはどういう状態になったら危険水域として非常事態宣言を出すのかをあらかじめ考えておかないと評価は難しいと思います。

「二分前着席」とは「原則として、出席する生徒全てがチャイムが鳴り始めた時点で着席している状態」です。1
00%達成は最初は無理だと思います。
「休みの日を除き10日間続いた場合、達成できたとする。達成日数が八割未満の場合は『問題アリ』と考える」というように決めるのが行動目標です。

「原則として」という言葉はみだりに使ってはいけません。
原則以外とはどのような場合なのか細かく決めておくというのは、世の中の常識です。
これがない「原則として」という言葉は、逃げを生む不誠実な態度で、法律ならザル法と言われます。

行動目標に対する評価のタイミングは、「二分前着席」「(ものが落ちていない)きれいな教室」「挨拶を進んでする」のように継続的に評価し続けることができるものばかりではありません。

「手助け」などは、誰か困っている他人がいないと成立しない行動です。
「思いやり」となると、困っている他者にあえて手を差し伸べない場合も含まれます。

一定のイベントがあってはじめて成立する行動ですが、その行動に対しては「なぜ」と「できたかできなかったか」が問われます。

一義的な評価として「気づいたか気づかなかったか」があります。
「気づかなかった」ならその時点でアウトなのです。

また「いじめのない」という目標に対しては、いじめがない状態が当たり前ですから、いじめた側はもちろん、それを傍観した者も、気づかなかった者も、いじめがあった場合等しくマイナスの評価を下します。

以上のことを見通して、生徒たちがより評価しやすい行動目標をたてて欲しいと思います。

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学級目標はスローガンではない

達成した状態の見える化

ダイエットの宣伝文句に「まず体内の脂肪を燃やせ!」というのがありました。
これはキャッチコピーとかスローガンと言われるものです。
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しかし「私の目標は『体内の脂肪を燃やす』ことです」と言ったらどうでしょう。
呼吸をしている限り体内の脂肪は燃焼していますから、目標とは言えません。

「一年以内に体重を11㎏減らす」とか「半年以内に空腹時血糖を99mg/dl以下に抑える」なら、何をしたら良いかわかりますね。

「体内の脂肪を燃やせ!」というのはスローガン、「一年以内に体重を11㎏減らす」というのは目標です。

スローガン(slogan)とは、理念や活動の目的を、簡潔に言い表した覚えやすい句・標語・モットーのこと。
一方「目標」とは、何かを成し遂げようとして設けた目当てであり、期限の定められたものでなくてはいけません。

「学級目標」と言いながらスローガンになってしまっているものがあります。

スローガンを目標とした場合は、それとは別に具体的に達成した状態がはっきりわかるものを同時に示しておかないといけません。

生徒会行事などで、スローガンと目標とをはき違えたものを見かけますが、スローガンならスローガンと言って欲しいと思います。

学校経営目標との関連

「学級目標は生徒が決める」という人がいますが、その場合「学級経営目標」との関係が問われます。
学級経営目標は「学校経営目標」と連動していなくてはいけません。

学校経営目標とは年度当初に配られる「学校運営計画」等の冊子に「学校教育目標」等の呼び方で載っているアレです。

学級経営目標は学校経営目標の下位カテゴリーです。
学校経営目標は「その学校の生徒全体の傾向に基づき立案」されていますから、あなたの学級だけ例外であるはずがありません。
まぁ、どんなクラスにも対応できるように漠然と書かれているのが普通です。

もし学校教育目標に三つの柱があるのなら、学級経営目標も三つの観点から立てる必要があると思います。

学級経営目標と学級目標が別々に作られたとすると、教師の指導目標と生徒の目標とが食い違う場合があります。
しかし、特に一年生やクラス替えがあった学年の場合、年度当初に自分たちのクラスを客観的に評価することは難しいはずです。
そこで担任がどういう指導をしたかが問題になります。

結果的に学級目標は、担任の学級経営目標、さらには学校教育目標と連動していなくてはいけないと思います。

特に大切なのは、担任が明確な「学級経営目標」をもっているかです。

学級目標は4月末から5月にかけての職員会議で審議しますよね。
生徒が決めた学級目標を発表するだけなら「生徒が何をしたいと考えているか」の報告で十分です。

「担任はどういうクラスにしようとしているのか、それは学校経営目標に対して正しく位置付いているのか(グランドデザインに位置づけられるものなのか)」を確かめ合うために職員会議で審議するのではないでしょうか。

また、「学級目標」は、「学級経営目標」と共に「そのクラスの改善したいところ」を入れる風潮があるようです。
つまり学級目標はそのクラスの弱点であり、学校全体から見た学級目標群の傾向は、その学校の弱点ともとれます。
もしその弱点が、学校教育目標とズレていた場合、どちらかのどこかに誤りがあると判断せざるを得ません。

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③ 生徒(代表者)の考えで決める
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前提
  1. 席替えの目的・意図を、生徒全員が共通理解している必要がある。(例:互いに注意し合えるように、等。毎回変わっても良い。)特に代表者はきちんと理解していなくてはいけない。
  2. 代表者は、班長レベルの生徒全員が認めるものでなければならない。また選ばれた代表者は、席替えの目的・意図を理解し、クラス全体について考え公平・構成に実践しようとする意思のある者でなくてははならない。
  3. 決定の過程で、代表者以外の者は代表者に干渉してはいけない。
メリット
  • 「自分たちの代表が決めた」という意識を持つことができる。
  • 教師が把握していない人間関係等を反映させやすい。
  • 教師の権限委譲であり、代表者には特にリーダーとしての意識や自主性を培うことができる。
デメリット
  • 前提を含め、決めるまでに時間と手間がかかる。特に代表者が相談する時間を確保してやることも難しい。
  • 特に代表者の選出に細心の注意を払わないといけない。代表者は誰かの傀儡であってはならないからである。
  • 代表者の人数が揃わない可能性があり、揃ったとしても代表者間の力関係に左右されることがある。その場合、一部の代表生徒の恣意に流れるため、反発を生みやすい。
対策
まず班長を決め、班長の合議により席替えが実施されることや、席替えの決め方などを全員に周知しておくことが必要です。
その際、合議には他者が介入してはならないことを指導し、公正性を担保するために合議に際しては教師が同席する必要があります。
決定された席は教師の許可制にするとよいでしょう。どのような決め方をしたにせよ、最終責任は教師にあるのです。

補足
決めるのに時間がかかるのが一番大きな問題です。
代表者を選ぶので1時間以上、更に代表者が集まって決めるのに1時間以上が基本です。
更に代表者が決めている間、他の生徒は何をしているか考えなくてはいけません。
安易に「休み時間に決めろ」と言っても、休み時間にそんな時間はあるはずもなく、放課後だって部活等で生徒は忙しいのです。
また、「いつもいつも班長は同じ人」というのは、どうなんでしょうか。
公的に認められたリーダーを作ることにつながります。

「自分たちの代表が決めた」ということはわかっていても、自分が決めたわけではありませんから、自主性が育つわけではありません。
むしろ自己中心的な生徒にとっては、教師より不満をぶつけやすくなりますから注意が必要です。
また、一部の生徒が傀儡としての代表者を送り込もうとする危険があります。

修学旅行の部屋割りなど、この宿舎係を中心に安易にこの方法でやってしまい、トラブルの元となることが多いようです。
トラブルになった場合、トラブルが起こらないように担任(または宿舎係担当職員)はどのような指導をしたかが問われます。

④ 複合型(例:③で原案を作り、①で修正する等)

メリット
  • 人間関係や学力等に関するコントロールを「自分たちの代表が決めた」とう意識が持てる。
  • 教師が決定したため反発がでにくい。
  • 教師が把握していない人間関係等を反映させやすい。
デメリット
  • 非常に時間と手間がかかる。
  • 教師が大幅に修正する等の強力な介入を行うと代表者としての立場がなくなる。
  • 教師が修正の理由を説明したとしても反発を受ける場合がある。
  • 時間がかかるため、他生徒の代表者への干渉が予想され、代表者に過度の負担がかかる。
対策

対策としては、生徒が提出したものに対し、今回の席替え(班編制)の意味や目的を満足させることができるているかで評価し、満足できない場合は「差し戻し」を行う方法があります。
しかしこれは更に時間がかかる作業です。
教師がダメ出しををするだけで改善案を示さない場合は、代表者のモチベーションを下げてしまいます。
従って、③で述べた、教師が同席して決定していく方法が適していると思います。

補足

③と④の違いは、決める話し合いのときから教師が参加するか、生徒が決めた後教師が決め直すか、という違いになります。

いずれにせよ教師をトップに据えた集団指導体制ともいうべきものです。

この場合、気をつけないと生徒のリーダーと馴れ合いとなり、最悪の場合、いつの間にか教師が傀儡となってしまう(あるいは生徒が教師の傀儡としてしか機能していない)ことがあります。
注意しましょう。

パターンは③→④ばかりではありません。
②→③→④の方法等、さまざまあります。
費用対効果をふまえつつ、最適の組み合わせを考えてみてください。

総括

どのような活動でも、必ずコストがかかります。時間もコストです。
いくら素晴らしいやり方であったとしても、完成させるまでに時間がかかったのではダメなのです。
より少ないコストで最大の効果が得られるように考えていきましょう。それが「対策」の基本です。
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座席の配置としては、男女市松模様に並べるのが一般的です。
机と机の間を離すか、二人一組で机を離さずに列になるようにする方法もあります。
また、縦横の格子状に机を並べるのではなく、教卓を中心に議会や大学の講義室のように放射状に机を並べることもあります。
座席の並べ方にもいろいろあるのです。

最近はアクティブラーニングとの関連でグループ学習が盛んになり、グループ学習の状態に速やかに移行できる座席配置も考えなくてはいけません。

決め方にせよ、席の並べ方にせよ、それぞれのやり方にはすべて理由があり、目的があります。
「今までそうしているから」「他の先生がそうしているから」というだけで、何も疑問を持たないというのはいけないと思います。

他の方法が考えられないというのは、思考力や判断力が低い先生、といわれてしまいます。
座席決めに限らず、教科指導でも学級指導でも、選択できる持ち駒を一つでも増やして、目的に応じたメリットとデメリットを考え、実行していくようにがんばりましょう。
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① 教師が決める
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メリット
  • 人間関係をコントロールしたり、学力水準等を意図的にコントロールできる。
  • 各班にリーダーや問題傾向生徒を意図的に配置しやすい。……「意図的に」です「均等に」とは言っていません。
  • 視覚や聴覚等にハンディのある生徒に配慮しやすい。
  • 問題のある生徒を教師の目の届くところに配置しやすい、等。
デメリット
  • 時間がかかる。
  • 席替えをやる毎に同じような構成になりやすい。
  • 「○○さんと一緒になりたかったのに……。」等の不満を持ちやすい。
対策

時間軽減に対する対応策として、生徒をキャラクター毎にパターン分類し、その組み合わせで決定していく方法があります。

生徒の不満に対する対応策として、この席替えの意図等をある程度生徒も理解していること等が挙げられます。
個別懇談会の順番等もそうですが、教師が決めた場合、生徒は必ずその意図を推測します。場合によっては邪推されることもあるのです。
ですから、意図はあらかじめオープンにし、その内容に添って行うべきだと思います。

その上で不満を持たれないためには、教師がカースト最上位にいなくてはいけません。
また、よほどのことがない限り、教師が決めた班構成をみだりに変更してはいけません。
「先生は自分たちの意見を聞いてくれる」ということと「自分たちのいいなりになる」ということは違います。

そのためにも、きちんと生徒や生徒たちの看取りをし確信を持って編成しないと危険が伴います。

年度当初はこのやり方をしても問題はありません。
生徒は「そうするものだ」と納得してしまい反発しないと思います。
そもそも、入学式やクラス編成発表直後の座席は名簿順で、身体的な理由以外で不満を持つ生徒はいません。

② くじ引きなどで決める
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メリット
  • 短時間で決められる。
  • イベント的な楽しみがある。
  • 表面的には機会は平等であり(これが本当の平等・公平かというと、疑問があります。)不信や不満を発生させにくい。
  • 様々な生徒と接し合う機会をもつことができ、より広い人間関係を構築しやすい。
デメリット
  • 人間関係や学力の配慮ができない。そのため好ましくない状況が発生する可能性が高い。
  • 身体的にハンディのある生徒に対する配慮が難しい。
対策

身体的にハンディのある生徒に対しては、例えば左耳が不自由な生徒には教室左側前方の席というように、座る席の範囲をあらかじめ決めて先にくじをひかせるという方法もありますから問題はありません。

この方法は、実は「学び合い」学習で推奨されているやり方です。
例えば学力の高い生徒同士、低い生徒同士の中でこそ「学び合い」が行われやすい、という考え方です。
教える生徒と教わる生徒が固定化されてしまっては「学び合い」は難しいのです。

人間関係の固定化を避けるためには、クラスの落ち着きが失われない程度に、頻繁に席替えを行う必要があります。
「不倶戴天の敵」のような生徒同士が同じ班になった場合は配慮します。
授業中うるさい生徒が同じ班になった場合等のレベルならば、まとめて指導する良い機会です。
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席替えは、単に教室内の位置を決める作業ではありません。同時に生活班を決めることでもあります。

生活班というのは、一定の目的・目標をもった集団であり、学級の組織の一つです。

生活班には学習と生活の二つの側面があります。
学習というのは授業に対する関わり、生活というのは給食当番とか清掃分担等の諸活動に対する関わりです。

「学習係はA班」というように、係活動自体を班に割り振るクラスもあります。
逆に、座席の位置と生活班とを完全に切り離して運用する場合もありますが、この場合は、純粋に学習効果が問題となります。

 席替えで考えなければいけない要素の第一は、人間関係に基づく学習効果に対する期待です。
授業中の私語等は人間関係に起因し、クラス全体の学習効果の低下を招きます。
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班相互の学力差について問題になる場合がありますが、これはグループ学習を積極的に推進する場合のみ考慮すべき内容です。
一斉授業や、申し訳程度にグループ学習を行う程度ではほとんど影響がありません。
特別教室等で授業を行う教科に対しても同様です。

班相互の学力差がよく問題になりますが、もし「できる生徒」が固定していた場合、考えることをその生徒に委ねてしまう班が発生する危険をはらみます。
ですから班相互のの学力差がないようにすることは、果たして考慮する必要があるかどうかは、議論が分かれるところです。

第二は、クラスのヒエラルキーに対する改善への期待です。
例えば給食当番などで常にサボる生徒がいて、それを周囲が黙認する人間関係が予想される班編制にした場合、これを改善するためのコストを教師が支払わなくてはいけません。
ならば班内あるいは学級内で自浄できる編成にしておくことが妥当です。

また、不倶戴天の敵の生徒同士を同じグループにしない、というのは一般的ですが、呉越同舟という言葉もあります。
生活班とは、合目的的な組織なのです。仲が良い・悪いということを組織の活動に影響させてはいけないというのは、社会では当たり前のことです。
ただし、この指導に対するコストは教師が支払わなくてはいけません。

いじめる側といじめられる側を同じグループにすることは避けなければいけませんが、仲が悪いからという理由で違うグループにするのは「寝る子は起こさない」指導だという考えもあります。

以上の要因を考慮した上で、席替え(班決め)のしかたは教師によるコントロールの強度により分類されます。

これと連動して、席替えの周期を考えていかなくてはいけません。
月ごとが一般的なようですが、給食当番等が一巡したらとか、行事を目安に変えていく等の方法があります。

これは、修学旅行の班分けなども同じです。
生徒の資質・能力や人間関係を考慮に入れて班編制を考えて欲しいと思います。

特に宿泊学習の部屋決めなど、クラスの宿泊係生徒に丸投げしてしまって、後々尾を引くことがあります。
宿泊係の担当職員になったら、それもふまえて指導をしていきましょう。
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以上のことを全部踏まえて、パーフェクトな席替えを行おうとすると、コストとして膨大な時間をかけなくてはいけません。
これはどのような決め方をした場合も同じです。
生徒に委ねると一見教師の時間節約になるような気がしますが、生徒が活動をする時間は教師が保証してやらなくてはいけないのです。

どのようなやり方にもメリットとデメリットはあります。
やり方は学年会などで全クラス歩調を合わせるように決まる場合が多いようですが、どのようなやり方に決まったにせよ、それぞれの一長一短を理解しデメリットが発生しないようにコントロールしていくことがプロの教師だと思います。

最終的な責任は学級担任が負わなくてはいけないのです。
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