十種神宝 中学国語の基礎・基本

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「今に生きる言葉」は、中学校最初の漢文の授業です。

指導内容としては、「ア 伝統的な言語文化に関する事項」の
  • 文語のきまりや訓読の仕方を知り、古文や漢文を音読して、古典特有のリズムを味わいながら、古典の世界に触れること。
が中心になると思います。

きちんと取り扱いたいことろですが、2時間扱い(作文も入れて3時間扱い)となっています。
とても厳しい時数です。

そこで、私は、以下のように指導しています

1時間目

最初にあるのが、故事成語の解説文です。
ポイントは「故事成語」の定義です。

教科書には
「中国の古典に由来する言葉」の中で
「歴史的な事実や古くから言い伝えられているたとえ話、エピソードなど、故事を背景にもっているもの」で
「故事から生まれた言葉」とあります。

これをおさえてから、
「推敲」「蛇足」「四面楚歌」や教科書に載っている「漁夫の利」を、生徒の興味関心をひくように話し、
「みんなも故事成語を一つ探し、もとになっている故事と、その言葉の意味を発表できるようにワークシートにまとめておこう。次の次の時間に発表してもらうよ。」と予告します。

「犬も歩けば棒にあたる」とか「アリとキリギリス」とか、
教科書の定義と違う慣用句やことわざを調べてくる生徒もいます。
このようなことのないように、しっかり釘を刺しておくと良いでしょう。

取り扱いに困るのは論語等にある「光陰矢のごとし」のような言葉です。
これらは中国の古典由来ですが、たとえ話やエピソードではないため、故事成語とは言えません。
しかし、ここまでいくと、生徒には見分けがつかないものもありますので、
私はそれでもよしとして、「これは故事成語とは言えないけれど……」と言い添えます。

このようなことを避けるために、
「図書館やネットで『故事成語』にはどんなものがあるか調べるといいよ」とアドバイスしておきます。

2時間目
矛盾1
「矛盾」の指導です。
ここは何度も音読させることで、文語のきまりや訓読の仕方を知り、古文や漢文を音読して、古典特有のリズムを味わいながら、古典の世界に触れさせるのがねらいです。

3時間目

生徒が調べてきた故事成語の発表を行わせます。

発表させながら「白文」と「訓読文」と「書き下し文」の指導を行います。

多くの生徒は、漢字による熟語を探してくるでしょう。
生徒が発表した故事成語に、返り点や送り仮名を付けて訓読文に直し、更に書き下し文にしていくのです。

単元末にある「漢文を読む」というコラムには
  • 漢字のみで書かれた原文(白文という)に送り仮名を補ったり、返り点や句読点を付けたりして、日本語の文章として読めるようにすることを訓読という。訓読のために付けるさまざまな符号をまとめて訓点という。
とあり、更に「送り仮名」「返り点」「句読点」「書き下し文」等の解説が載っています。

ただ読んだだけでは生徒には具体的にイメージできないかも知れません。
そこで、生徒が調べてきた故事成語をもとに、教師がそれを白文に返り点や送り仮名をふって訓読文に直してやり、更に書き下し文にしてみせるのです。

少し慣れてきたら、生徒にチャレンジさせてみてもよいでしょう。

また、これを端緒として、毎時間やる漢字テストで、熟語が出てきたら適宜指導していきます。
これによって、2年生で行う「熟語の構成」がスムーズに学習できること請け合いです。

「今に生きる言葉」の学習プリントを作成しました。
興味のある方はこちらへどうぞ。


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光村の指導書を見ると、
「古今和歌集仮名序」と「君待つと」を合わせて3時間で扱うことになっています。
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おいおい、ちょっと待ってくれ、
そんな短い時間で、教科書の載っている和歌を教えられるわけないじゃん、
と言いたいですね。

そこで、よくある指導は、
生徒に好きな短歌を調べさせ、発表させる、というものです。

しかしこの方法はなかなかうまくいきません。

自分の発表はそれなりにやりますが、人の発表はそんなに真剣に聞かないからです。
もしグループでやらせるとなると、
グループの誰かに任せてしまって、まったくやらない生徒も出てきます。
ダウンロード
一人一人にレポートを出させて、それをまとめようとしても、
この受験に向けて総合テストの対策に忙しいこの時期に、
やってられない、というのが3年生の気持ちでしょう。

私たちだって和歌の学習に何時間もかけてはいられない、というのが本音です。
3年生の気持ちであると思います。

そこで、私はこの単元を次のように指導しています。

1時間目

まず、教科書に載っている和歌を一枚の紙にまとめ、全部すらすら読めるまで音読させます。

次に「歌はもともとシャウト(感情のほとばしり)である」といい、
♡の気持ちがこもっている歌はどれだろう」と問い、一人一人に紙に印をつけさせてから、
グループ毎に話し合わせ、グループとしての見解をまとめさせます。

間違いなく上がるのは額田王「君待つと」、東歌「多摩川に」でしょう。

意見の分かれるのは防人歌「父母が」、大伴家持「春の園」、小野小町「思ひつつ」だと思います。

ここで「♡の歌」と言ったのは、
男女の恋愛を歌った歌と、親子の情愛を詠った歌とをわざとあいまいにするためです。

「♡の歌」に入れても良いものはどれか。なぜそう考えるのか、
これを言わせることを通し、
歌の理解を深めると共に、
生徒なりの「部立て」(和歌の分類)を行わせようというのです。

話し合いを進める中で
「♡は、恋愛の歌と親子の情愛の歌に分かれるんじゃないの?」と生徒は考えます。
出てこなかったら、こちらから言ってしまってもかまいません。

そして

「♡マークは、男女の恋愛の歌と、親子の情愛の歌に分かれたね。
では他の歌は、どのように分類できるか、次の時間までに考えてきてください」

と言って、一時間を終わります。

2時間目

2時間目は、生徒が考えてきた分類に従って分けていきます。

これは、原典に基づいた正式な「部立て」である必要はありません。
大切なことは、和歌で読まれた内容のおおよそを生徒が自力で理解していくことなのです。

和歌が単独で高校入試に出題されることは、あまりないと思います。
出題されるとすれば、歌物語として出題されるでしょう。

そこで、その対策として私は、かつて教科書に載っていた「伊勢物語」で指導をしています。
興味のある方はこちらからどうぞ。

生徒たちは、
  • 景色を詠んだ歌
  • 季節を詠んだ歌
  • ♡マーク以外の人情を詠んだ歌
などを考えてくると思います。
あくまでも生徒が考えたもので良いのです。

その中で、生徒の考える分類に従いながら、

「その通りですね。そこでプチ知識として~」と、正確な知識を与えていきます。

例えば
柿本人麻呂「東の」は実はヨイショの歌だったとか、
山上憶良「憶良らは」は宴会で場を盛り上げるための歌だったとか、
紀貫之「人はいさ」は冗談の言い合いの歌だったとか……。

これをやっていると、1時間などすぐに過ぎてしまいます。

そして最後の一時間は、和歌から連歌、俳諧、俳句に連なる日本文学史の復習と、韻文の技法の復習をやっておしまいにします。

時期的に言うと、
統一模試も佳境に入り、最後の総合テストも間近な時期でしょう。
生徒がなるべく受験に集中できるように、
そして一点でもたくさん点がとれるように指導していくのが功徳だと思います。

「君待つと」の和歌の解説を作成しました。
教科書に載っている和歌の具体的な解説です。
興味のある方はこちらへどうぞ。
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