若いみなさんが高校・大学へ進学した当時、

 「確かな学力」とは「生きる力」を知的側面からとらえたもので、

 「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」

 とされていました。

 ちなみに「生きる力」は「確かな学力」の他に「豊かな人間性」「健康・体力」があります。
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 「確かな学力」で知識や技能の定着を目指すのはよいのですが、
  • どうやって課題を生徒に発見させるのか。
  • 生徒が「やれ」と言われたからやるのではなく、自分から学び続けるためにはどんな指導が有効なのか。
  • どんな資質や能力をどのように育てればよいのか
等々、先生たちの悩みはつきませんでした。

 しかし、そんな中でも世の中はどんどん変わり続けました。

 同時多発テロやリーマンショック後の世界同時不況により
 「失われた十年」は「失われた二十年」になり、
 その間格差社会が進み、ブラック企業がはびこったことは、
 みなさんもご存じの通りです。

 この「就職氷河期」の中で就職時期を迎えたみなさんの先輩たちが、
 今も、ひきこもりニートになっていることが社会問題になっています。

 少子高齢化年金問題が最近クローズアップされていますが、
 これは年号が昭和が平成に変わった30年以上前からわかっていたことです。
 (先送りにし続けたツケをこれから払わされるだけのことです……ただそれだけのことですよ。泣)

 今、銀行の支店が次々に閉鎖されています。
 保険会社などは数千人単位でリストラを行っていることもご存じの通りです。
 また、今年になって「入国管理法」が改正され、
 外国人労働者の本格的な受け入れが始まりました。
 
 銀行の閉鎖や保険会社のリストラは、なぜ起こったのでしょう。

 これは第4次産業革命*1)の結果を見越してのことです。

 第4次産業革命の原動力は、ネットワークAIです。
 その結果、事務系の仕事はすでになくなりつつあるのです。
 そして事務系でない現場方でも、
 単純な仕事は人件費の安い外国人労働者に、ということでしょうか。
 (意見には個人差があります。)

 これが、指導要領で言う「世の中のグローバル化や急速な情報化、技術革新」の中身です。
 今後、どのように子どもたちが生きていく社会が変化していくのか、誰にも予測ができません。

 しかし子どもたちは、否応なく訪れる変化に対応し、
 確実に苛烈になっていく国際社会の中で
 よりよく生きていかなくてはいけないのです。

 そのためにも、単なる知識だけではない、
 「確かな学力」は、より幸福を追求するために
 なくてはならない力なのだ、と指導要領は考えているようです。

  *1) 第4次産業革命
 18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化を第3次産業革命と言います。それに続く産業革命です。
 第4次産業革命は、二つの技術革新が原動力となっています。
 一つ目は“IoT”と“ビッグデータ”です。“IoT(物のインターネット Internet of Things)”とは、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組みや、それによるデジタル社会(クロステック)の実現を指すしくみです。具体的には、工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらがネットワークでつながり、これを解析・利用することで、新しい付加価値が生みだされるしくみです。
 二つ目はAI(人工知能)です。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことを可能とする技術です。将棋や囲碁などでは、ほとんど名人級の思考力を備えるようになりましたね。このAIに従来のロボット技術が加わったとき、更に複雑な作業が可能となります。また3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となります。
 この“IoT” “ビックデータ”と“AI”が結びついたとき、人間に残された仕事は限られたものになります。“AI”にはできない、人間にしかできない仕事をする力を伸ばそうというのが「生きる力」なのだと思います。

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